恋愛は難しい。大人になってからの恋愛は特に(と言っても、最後の恋人と付き合い始めたのが24歳の頃だったから、大人になってからの恋愛経験はほぼ皆無である)。
大人の恋が難しい理由に、利害関係があると思う。学生時代は、同じ学校だろうと、そうじゃなかろうと、特に利害関係はない。部活の後輩と付き合ったことがあるが、コンプライアンス上の問題は特になかった(と思う)。
大人は違う。大人になってから出会う人は、基本的に利害関係者である。その多くは仕事関係だろう。仕事がさも生きがいであるかのように語られる時代であるから、それが当たり前になっている。利害関係者でない出会いの経路としては、趣味とマッチングアプリ(結婚相談所などを含む)があると思う。
私にはこれと言った趣味がない(いろんなことに興味があることの裏返しである)。映画はそれなりに好きだけれど、映画が好きな人と付き合うビジョンが見えない。そもそも、映画について他人とあれこれ語りたい気持ちがない。映画に限らず、どんな趣味でも同じ。趣味はひとりで楽しむタイプである。
だから、多くの人がマッチングアプリや結婚相談所を利用するのだろう。現代において、唯一、安全に恋愛ができる場といっても過言ではない。利害関係を無効化してくれる点にこそ、マッチングアプリの価値があるともいえる。
私はマッチングアプリを使ったことがない。インストールしたことすらない。マッチングアプリでは良きパートナーに出会えないと思っているからだ。このあたりは別のエッセィにも書いたから、気になる方はそちらをどうぞ。となると、出会いの経路はほとんど断たれる。正直、どんな人と結婚することになるのか、想像もつかない。
しかし、よく考えてみると、利害関係者であることは、必ずしも悪いことではない。会社の上司と部下が付き合うようなケースは、通常、パワハラであり、良くないものとされる。本人同士が合意していても、ほかの社員が不利益を被ったり、業務に支障が出る可能性が否定できない。けれど、これがほとんど個人経営に近いような場合、たとえば、二人で会社を経営していて、同時に恋愛関係であるようなケースの場合は、特に問題ではないだろう。夫婦で店を切り盛りするという話はよく聞く。単純な雇用関係以上のパートナーシップが、事業にプラスに働くことは充分に考えられる。
利害関係と聞くと、ゼロサムゲームや、あるいはパイの奪い合いのような、競争的なイメージが浮かびやすい。しかし、良いビジネスは、価値を生み出すことができる。利害関係者全員がハッピーになるビジネスは、良いビジネスだ。その延長線上で、自然なパートナーシップが生まれる可能性は充分にあるだろう。私の大学の知り合いの中には、同じ研究室から結婚した人が少なくない。理想のパートナーシップのひとつの形だと思う。
では、私はどうするか。とりあえず、創作を続けるしかないだろう。もちろん、出会いのためにものづくりをしているわけではない。他人と出会うきっかけがあるとすれば、それくらいしか思いつかない、ということ。結婚しても、創作を辞めたりしない。その点に合意してくれることは、結婚条件のひとつだろう。それに、もし私が売れっ子になれば、収入は二人のものになる。悪くないビジネスだと思うのですが。