運ゲーの必勝法

池田大輝
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公開:2025/7/20

運ゲーには必勝法がある。それは、無限回試すことだ。宝くじは、全部買えば必ず当たる。もちろん、宝くじの場合は、全部買って当てたとしても、トータルでは赤字になる。大学受験なんかも基本的には運ゲーであるが、こちらに赤字の概念はない(予備校に払うお金を無視すれば)。だから、希望の大学に受かるためには、受かるまで受け続ければ良い。オーディションや公募も大きくは同じ。希望の会社に受かるのは、必ずしも運ゲーとはいえない。多くの会社にとって、公平に採用する義理はない。相性とか適性といったものが重視される。だから、何度受けても絶対に受からない会社というのはそれなりにある。

1%の確率で勝つゲームを100回繰り返したときに、一度でも勝つ確率は約63%。1000回なら、ほぼ100%になる。直木賞や芥川賞など、超有名なものを除けば、文学賞の応募総数は数百程度と聞いたことがある。つまり、100回くらい応募すれば、そこそこの確率で受賞できる計算になる。もちろん、選考が運ゲーとは限らないのだけれど、何度も繰り返すことで上達するというメリットは無視できない。喩えるなら、振るたびに当たりやすくなるサイコロみたいなものだ。1%の確率で勝つゲームを繰り返すたびに、勝率が2%、3%……と増えると仮定すると、20回目までに成功する確率は9割を超える。

こうして毎日書いているエッセィも、基本的には運ゲー的な思想に基づく。バズることは想定していない。大成功は最初から望んでいない。ひとつひとつのエッセィは、きわめて些細で、取るに足らない。だからこそ、毎日続けているのだ。受験と違い、作品は蓄積される。小さな確率が、少しずつ積み上がっていく。その変化は直線的ではなく、指数関数的である。最初は全然だめだけれど、どこかでぐんと伸びるタイミングがある。ずっとなにかを続けてきた人は、きっと味わったことがあると思う。それは、運とか縁とか言われたりする。全くその通りだ。運ゲーにおける必勝法を、地道に続けたから勝った。それだけの話なのだ。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。エッセィを毎日更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink