細田守監督との思い出

池田大輝
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公開:2025/11/24

高校生の頃、細田守監督からサインをいただいたことがある。映画甲子園という映画の大会に参加して、そこにゲストとしていらしていた細田さんにサインを書いていただいた。サインは今も自宅に飾ってある。『サマーウォーズ』の夏希先輩を書いてもらった。当時、私は細田さんの映画をほとんど観ておらず、たぶん『サマーウォーズ』も観ていなかったと思う。そんな私にも、細田さんはとても気さくにサインを書いてくださった。

それから、大学生になった私は、新海誠のファンになった。細田さんの映画も毎回観ているけれど、正直、ファンというほどではない。これが好き、という細田作品も特にない。そんな監督のサインにすぐそばで見守られながら、15年近く生きてきた。映画を撮ったり、アニメを描いたり、ゲームをつくったりしてきた。

と、書くと、細田守監督にまるで興味がないように聞こえるかもしれないけれど、そうではない。細田さんの映画は、毎回、楽しみにしている。今日、『果てしなきスカーレット』を観てきた。やはり、今回も、あまり嵌まらなかった。でも、なぜか、気になってしまう。次はどんなものをつくってくれるのか、もう、気になっている。

高校時代の思い出のせいで、思い出補正がかかっているだけかもしれない。優しく話しかけてくださったときの記憶が、冷静な評価を邪魔しているのかもしれない。ただ、言えることがあるとすれば、思い出補正と言えるほどの強烈な記憶を観客の人生に刻みつけることができるのは、優秀なクリエイターでなければ難しいだろう。少年よりも無邪気だった細田さんの背中を、私は今もはっきりと覚えている。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink