商業デビューと結婚

池田大輝
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公開:2026/5/28

きのう『商業デビューという幻想』というエッセィを書いた。要約すると「商業デビューはゴールではなくスタートだ」みたいな内容である。作家になって終わりではなく、書き続けることのほうが大事だ、ということ。

作家になることと、結婚はよく似ていると思う。作家は、名乗った瞬間から作家である。本を書いたことがなくても、作家を名乗ることはできる。デビューしたは良いものの、2冊目が書けない作家は山ほどいる。

夫婦も、婚姻届を出せば夫婦である。事実婚なら婚姻届すら必要ない。夫婦を名乗った瞬間から夫婦であり、指輪はそれを証明するための印である。

「名乗るだけなら誰でもできる」と思ったら大間違いだ。名乗ることが一番難しいと言っても過言ではない。作家を目指す人は自分を「作家の卵」と呼ぶ傾向がある。「小説家を目指しています」とか「修行中です」などとプロフィールに書いている人をよく見かける。きっといつまで経っても作家にはなれないだろう。

結婚も同じ。「いつか素敵な人に出会えますように」と言う人はとても多い。行動に移せ、と言いたいのではない。それは、各々の好きにすればよろしい。簡単に言えば、覚悟がないのだ。本を一冊も書いたことがないのに出版社からオファーが来ることはあり得ないように、ベッドでゴロゴロしているだけで運命の人に出会うこともまたあり得ない。原稿を持ち込んだりマッチングアプリを始めることは、覚悟を示すための行動にはなり得る。ただし、行動すればうまくいくとも限らない。変化を起こすためには、覚悟を決める必要がある。覚悟それ自体が変化であるともいえる。

結婚は、覚悟というものを理解するのに格好のテーマだと思う。結婚をする合理的なメリットはない。それどころか、恥をかいたり、相手を不快にさせるリスクを伴う。覚悟を決めなければ絶対に結婚はできない。

私の好きな作家やクリエイターは、30代でデビューした人が多い。これくらいの年齢になると、覚悟を決めようと思うのだろう。あるいは、覚悟を決めずにはいられないくらい運命的な何かに出会ってしまうのだと思う。私がまさにそんな感じ。それがなんなのか、ひとことで言うのは難しいけれど、とにかく、30歳頃を境に人生が大きく変わり始めた。覚悟と書くと大袈裟に見えるかもしれないけれど、なんというか、自然とそういう気持ちになっていった。

面白い作品を生み出せるかどうかと、運命の人と結婚できるかどうかは、私にとってほとんど同じ問題である。と言い切ってしまうのは、創作に比べて結婚には覚悟を決めきれていないのを悟られたくないからかもしれない。

@radish2951
恋愛ゲームをつくっています。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink