「誰かが見出してくれる」と思わないほうがいい

池田大輝
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公開:2025/3/22

私は恋愛ゲームをつくっていて、これからも物語を軸に創作を続けていくつもりだ。とはいえ、こういうのはお金がかかるし、生活費も稼がなければならない。だから、できるだけ持続可能な方法を模索する必要がある。このようにエッセィを書いているのは、長い目で見た宣伝であり、プロモーションである。もちろん、これ以外にもあらゆる手を尽くして商売を成り立たせていかなければならない。

最近は、私がつくっているような小規模なゲーム(インディゲーム)がそれなりに盛り上がっているらしく、企業が開発をサポートするケースもあると聞く。特に金銭的な援助は、誰もが求めるものだろう。出版業界における新人賞みたいなものを、ゲーム業界でもちらほら見かけるようになった。そこで「見出されれば」、それなりの資金を得てゲーム制作に専念できるというわけである。

しかし、当然ながら、そのような支援を誰もが受けられるわけではない。本当に、ごく一部の、才能と実績と運を持った人だけがその権利を得ることができる。椅子の奪い合いというやつだ。椅子にありつけるかどうか、言い換えれば「見出される側」か「見捨てられる側」かのどちらかに振り分けられる。ほとんどの人は、後者になる。

これは、まあ、仕方のないことだと思う。テレビに出たい芸人が全員テレビに出られるわけではない。映画に出たい俳優が全員出演できるわけではない。それとほとんど同じ理屈だ。私は学生の頃、映画監督になりたくて、自分でいろいろ作品をつくりながら、どうにかその門戸を叩けないかと足掻いていた。けれど、上手くいかなかった。だから、もう少し別のアプローチを検討した結果、こうして恋愛ゲームをつくっているというわけである。誰も見出してくれなかったから、自分でやることにしたのだ。

お笑いであれ、お芝居であれ、映画であれ、ゲームであれ、やりたいこと、つくりたいものはほとんど自力でなんとかなる時代だ。特に映画は、iPhoneでほとんどハリウッドレベルの映像が撮れてしまう。何か月か必死で働けば、カメラも、スタッフも、役者も全て揃う。あとは撮影して、編集して、YouTubeで公開すれば良い。立派な映画監督デビューである。一昔前は、高価なカメラに触れるために長い下積みを経る必要があった。それが、数か月のバイトでスキップできる。すごい時代になったと思う。

そうじゃなくて、プロとしてやらなきゃ意味がないんだ、テレビに出なきゃ、映画館で上映されなきゃ、事務所に所属しなきゃダメなんだ、という声が聞こえた気がする。私も劇場映画を撮ることは夢のひとつであるから、気持ちはわからなくない。けれど、それはたぶん、「プロ」に夢見すぎだ。

プロは、そんなにいいものじゃないと思う。そもそも、誰だって、収入を得て生活している以上、なんらかのプロである。コンビニバイトなら、コンビニのプロだ。プロとは、それくらいの意味でしかない。もちろん、違う定義を採用しても構わない。「未経験からでもプロになれる!」と謳って高額なセミナーやスクールに誘導するビジネスはどの世界にもある。そこでいう「プロ」は、私の定義とは少し違うらしい。というか、コンビニバイトだって、面接という名のオーディションがあるという点においては、お笑い芸人や俳優と大きな違いはない。「見出される側」か「見捨てられる側」かのジャッジは、どの世界にも当たり前にある。その比率が少し違うというだけの話。

だから、一喜一憂しても仕方がない。バイトだって、普通に落ちるのだ。ましてや、遥かに倍率の高い競争に負けるのはきわめて自然なことである。大事なのは、一回きりだと思わないこと。冷静に考えれば、昔よりも「見いだされる場」はかなり増えた。テレビや映画だけが花形だった時代はとっくに終わっている。怪しいビジネスも多いけれど、まっとうに活躍できる場は探せばいくらでもある。そういう場所を探して、何度も挑戦すれば良い。一度「見出された」プロだって、日々、オーディションや資金調達に奔走しているのだ。その練習だと思えば、全然、大したことじゃない。

と、偉そうに書いてみたけれど、私も同じだ。そう、同じ。きっと、これを読んでくださっているあなたも同じような悩みを抱え、夢を見て、幻想に惑わされているのでしょう。全然、同じです。だから、気長にいきましょう。ここで会ったのも、なにかの縁だと思いますので。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink