唯一無二の声

池田大輝
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公開:2026/6/9

私は他人を声で識別しているらしい。久しぶりに人に会うと、こんな見た目だったっけ、と思うことはあるけれど、こんな声だったっけ、と思うことはまずない。長らく会っていない人でも、その人の声を脳内で再生できる。これが普通なのかどうかはわからない。音に敏感な体質であることはたぶん間違いない。他人が発する音に過敏に反応してしまう。ある職場で働いていた頃、他の社員の咳払いがあまりにもストレスで辞めたことがある。それくらい、音には敏感だ。

苦手な音はとことん苦手だけれど、心地よい声はとことん心地よいと感じる。私は毎晩、ジャルジャルのYouTubeのコントを枕元で再生しながら寝ている。後藤さんと福徳さんの声がすっかり耳に馴染んでいる。好きな芸人さんは他にもいるけれど、他の人では寝付けない。まさに子守唄である。

声に魂が宿る、というと大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、たぶん、そのような感覚を素朴に抱いているのだと思う。それがいつからなのかはよくわからない。新海誠作品の「声」が好きだというエッセィを少し前に書いた。あの人もまた声に取り憑かれていることは、作品を観ればよくわかる。なにせ、デビュー作のタイトルが『ほしのこえ』である。

唯一無二の声を持つ人がいる。それは物理的な声かもしれないし、もっと観念的な声かもしれない。それは、全く音のない空間、たとえば文章から聞こえることもある。唯一無二の声は、媒質を変えても不思議と同じ響きを持つ。その神秘に、魅せられてしまったのだ。

@radish2951
恋愛ゲームをつくっています。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink