時間をかけてファンになってください

池田大輝
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公開:2025/5/17

ファンを増やすことは、毎日書いているエッセィの重要な目的のひとつである(アンチを増やしている可能性も否定できないが、熱心なアンチはほぼファンみたいなものなので問題ない)。

とはいえ、毎日全部を律儀に読んでくださっている人はまずいないだろう。読まれる数にはばらつきがある。テーマが多岐に渡るし、あえて共感を誘わないような内容を書くことも多いから、当然である。もし毎日読んでくださっているのだとしたらありがたい。ほぼ友達みたいなものだ。友達にさえこんなに赤裸々に話したりしない。じゃあ、恋人? とかいう軽口はさておき。

私は、天才でもなければカリスマでもない。私のイメージする天才とは、たとえば米津玄師とか藤井風とか藤本タツキとか。そういう、人を惹きつけてやまない輝かしい魅力みたいなものは私には無い。天才でないことがコンプレックスだった時期もあるけれど、今はもう大丈夫。天才じゃないなりに、あれこれやってみるのも楽しいと思えるようになった。こうしてエッセィを書いているのもそう。もし私が天才だったら、毎日書いたりしないだろう。月に一度くらい、予告なしに日記的なものを投稿してファンを沸かせる。天才はそれが価値になる。

要するに、地味なのだ。キャッチーな魅力というものが私にはない。だから、時間をかけるしか方法はない。時間をかけて、少しずつ私のことを知ってもらう。少しずつ私のことを好きになってもらう。私の場合、友達になるのにもものすごく時間がかかる。知り合ってから、二人で遊びに行くまで数年かかることは珍しくない。時間をかけることでしか他人と関係を築けない。急いで仲良くなろうとした人と友達になった試しがない。そういう人間である。

いわんや、ファンとの関係においてをや。この文章を読んでくださっている人、あるいは私の作品に触れてくださった人の中には私と会ったことのない人も多いだろう。毎日会う友達でさえ仲良くなるのに数年かかるのだから、私のことを好きになるのに10年かかったって全然おかしくない。むしろ、それくらい時間をかけてファンになってくれたほうがうれしい。それだけ、私の色々な面を見てきてくれたということだから。

私という人間をひとことで表すのは難しい。これも、コンプレックスだった。就活や転職活動では本当に苦労した。今は、それも悪くないと思っている。私はいろんなことをしている。いろんなことを考えている。いろんな人と繋がっている。そのすべてを短時間で伝えることも、受け止めることも、できないと思う。だから、のんびりいきましょう。ちなみに、このエッセィをリアルタイムで読んでくださっているあなたは、紛れもない古参である。古参であればあるほど長い目で楽しめる。何年か後に、その意味がわかるはず。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。エッセィを毎日更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink