戦争を賛美する人は、たぶん、あまりいないだろう。どんな大義のもとにあろうとも、人を殺すことは肯定しがたい。自らの信じる正義のために、他人から奪う行為、それが戦争だ。そして、実は、似たようなものがこの世界にはもう一つ存在する。仕事だ。
仕事をすることは、素晴らしい行いとして称えられる。働くことが善であり、働かない者は悪と見做される。仕事の成果を誇らしげに語る人は少なくない。そこまで素晴らしいことなら、お金をもらわず、休日返上でやるべきではないかと思うけれど、そういうわけではないらしい。
仕事をするのは、ほとんどの人にとっては、生きるためだ。食事を摂り、衣服を着て、安全な住居で眠りたい。そのためにはお金が必要で、だから仕事をする。きわめてシンプルな理屈である。
同じ理屈が、戦場でも通用する。生きるためには、殺さなければならない。なぜなら相手は私を殺そうとするからだ。なぜ戦場に赴くのか。それは国への忠誠を果たすためだ。戦争に勝つことが善であり、逃げ出したり殺されたりすることは悪なのだ。
戦争は嫌いだし、人を殺したいとも思わない。きっと、誰だってそうだろう。それなのに戦争は無くならない。人類は愚かだ、と呆れながら、今日も皆働いている。戦争が無くなるときは、仕事が無くなるときだ。本当の平和を、私たちはまだ知らない。