誰でも絶対に恋愛が上手くなる方法

池田大輝
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公開:2025/2/10

「上手い恋愛」とはなにか? とにかくたくさんの人と付き合うこと? たったひとりの運命の相手を愛し続けること? そもそもそのようなくだらない情事に首を突っ込まないこと?

付き合った人数を恋愛の上手さと定義することには一定の合理性がある。人と付き合うことは簡単ではない。でも、付き合ったのと同じ数だけ別れたということでもあるから、その点では恋愛下手といえるかもしれない。

たったひとりを愛し続けることは一般的には美徳とされるし、既婚者にとっては義務である。しかし、これも行き過ぎるとストーカーになりかねない。一途な恋は、どちらかといえばバッドエンドのフラグである。

恋愛をせずに生きていくことは、今の時代、全然可能である。独身貴族という言葉があるように、独り身だからこそできることもある。恋愛以外のコミュニティもたくさんある。色恋沙汰が生じない保証はないけれど。

私は恋愛ゲームをつくっていて、過去にイベントに出展した際に取材を受けたことがある。記者に「ゲームには実際の経験が反映されているんですか?」と質問された。どのように答えたのかはあまり覚えていない。

恋愛ゲームにおける恋愛は、一般的には上手くいくようになっている。上手くいかないルートがバッドエンドで、上手くいけばハッピーエンド。告白して、付き合って、いろいろあって、幸せに暮らしました。と。

恋愛ゲームをつくっていて思う。恋愛は本当に難しい。ゲームをつくるのが難しいのではない。物語の主人公(プレイヤー)がヒロインを愛し、ヒロインにその愛を受け入れさせることが、本当に、難しいのだ。

もちろん、それは幸せの唯一の形ではない。いろんな恋愛があり、いろんな幸せがある。そんなことはみんな、わかっている。でも、あなたにとって、私にとってのハッピーエンドは、決して多くはない。

そう、答えなどないのだ。なにを当たり前のことを、と思った? ごめんなさい。でも、たぶん、そうだと思う。人生に答えがないように、恋愛にも答えがない。いや、きっと、人生よりも難しい問題かもしれない。

生きて死ぬことは誰にでもできる。生まれた人なら、誰でも。その中で、多少恵まれているとかいないとか、差はある。でも、それなりに生きる権利は保障されているし、生きるだけならそこまで難しくない。

でも、恋愛は違う。誰にでも与えられる権利ではない。学校でも恋愛については教えてくれない。誰も正しいやり方を知らない。傷つきたくないし、傷つけたくない。でも、どうすればいいのかわからない。

恋愛は、ほとんど意味不明なものだ。なにが正解かわからないし、なにが不正解かもわからない。結婚すれば幸せとは限らないし、歪な関係でも幸せだったりする。幸せという言葉さえも頼りなく思えてくる。

だから、恋愛が上手くなる方法などない。そもそも恋愛自体がよくわからないのだから、仕方がない。よくわからないものは上達のしようがない。タイトル詐欺である。ごめんなさい。

でも、よくわからなくても、なんとなくはわかることがある。この人と話していると楽しいな、とか、この人は合わないな、とか、この人は私のことが好きなんじゃないだろうか、とか。

ぼんやりとしていて、頼りなくて、もどかしい気持ち。世界のどこにも答えは落ちていない。AIに尋ねても答えてはくれない。答えがあるとするならば、それは私の、あなたの中にしかない。

そのような、ほとんど幻か亡霊のような恋心を形にする方法がひとつだけある。ラブレターを書くことだ。渡せなくてもいい。振られてもいい。ストーカーにならなければ、大きな迷惑にはならない。

告白が上手くいく保証はない。成功する確率はほとんどゼロだ。それでも、手紙を書くことはできる。気持ちを、想いを、言葉にしてみよう。上手く書けなくてもいい。むしろ、上手く書けないほうがいい。

書き終えたら、あとはほとんど終わりだ。それを渡そうが、渡すまいが、結末はあまり変わらない。『秒速5センチメートル』を観ればわかる。手紙は時間の中に埋もれていく。渡せたとしても、きっと、同じだった。

思い出した。私が恋愛ゲームをつくった理由。あれはたぶん、ラブレターだったのだ。言おうと思って、忘れていた。誰に宛てたラブレターかって? 『さくらいろテトラプリズム』をプレイすればわかるよ。

@radish2951
ゲーム作家。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink