「私のことエッセィに書いてもいいよ」

池田大輝
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公開:2026/5/14

「あー……うん」

「なにそのリアクション。嫌なの?」

「別に嫌じゃないけど……逆にいいの?」

「いいのって? なんで?」

「いいならいいけど」

「てかさー、男子ってそういうの全然言わないよね。付き合ってても家族に言わないとか、あれマジでなんなん? 女子はめっちゃ言うよ」

「そうなんだ」

「もう、全部伝わるから。女子のネットワーク、えぐいから」

「うう、怖」

「てことで、書いて」

「書くって、なにを?」

「私について」

「なにを書けばいいの?」

「私の可愛いところとか」

「うーん……」

「おい!」

「あ、いや、可愛いところはいっぱいあるよ」

「ふふん。じゃあ書きなさいよ」

「わかった。書くね。……」

「……」

「……」

「……なんて書いたの?」

「まだ書いてる途中」

「見せて」

「いや……」

「変なこと書いてないでしょうね」

「変なことの定義による」

「ねーそういうのだるい」

「まあ、まずいことは書かないから安心して」

「……」

「うん?」

「スキあり!」

「うわ! ちょっと!」

「……ふふーん。なるほどね」

「……まだ書いてる途中だから」

「なんで私の名前を書いてくれないの?」

「えっ?」

「なんで私の名前を書いてくれないの?」

「……書いたことあるよ」

「えっ」

「読んでないんだ」

「……ごめん」

「よかった」

「えっ?」

「なんでもない」

そう言うと彼はパソコンを閉じた。横で棒立ちしている私を見て軽く笑い、椅子から立ち上がって私の手を取った。そのまま私たちは夜の新宿を散歩した。昼は夏みたいに暑いけれど、夜は上着がないと風邪を引いちゃいそうなくらい寒い。それでも、いまこの瞬間は、胸のあたりがぽかぽかしている。私はマスクを外してポケットに入れた。すっぴんに眼鏡の私を見て、彼は意味ありげに笑った。そういえば、彼は私の名前を呼ぶとき、なぜかいつも恥ずかしそうにする。その理由が、わかった気がした。

@radish2951
恋愛ゲームをつくっています。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink