「あー……うん」
「なにそのリアクション。嫌なの?」
「別に嫌じゃないけど……逆にいいの?」
「いいのって? なんで?」
「いいならいいけど」
「てかさー、男子ってそういうの全然言わないよね。付き合ってても家族に言わないとか、あれマジでなんなん? 女子はめっちゃ言うよ」
「そうなんだ」
「もう、全部伝わるから。女子のネットワーク、えぐいから」
「うう、怖」
「てことで、書いて」
「書くって、なにを?」
「私について」
「なにを書けばいいの?」
「私の可愛いところとか」
「うーん……」
「おい!」
「あ、いや、可愛いところはいっぱいあるよ」
「ふふん。じゃあ書きなさいよ」
「わかった。書くね。……」
「……」
「……」
「……なんて書いたの?」
「まだ書いてる途中」
「見せて」
「いや……」
「変なこと書いてないでしょうね」
「変なことの定義による」
「ねーそういうのだるい」
「まあ、まずいことは書かないから安心して」
「……」
「うん?」
「スキあり!」
「うわ! ちょっと!」
「……ふふーん。なるほどね」
「……まだ書いてる途中だから」
「なんで私の名前を書いてくれないの?」
「えっ?」
「なんで私の名前を書いてくれないの?」
「……書いたことあるよ」
「えっ」
「読んでないんだ」
「……ごめん」
「よかった」
「えっ?」
「なんでもない」
そう言うと彼はパソコンを閉じた。横で棒立ちしている私を見て軽く笑い、椅子から立ち上がって私の手を取った。そのまま私たちは夜の新宿を散歩した。昼は夏みたいに暑いけれど、夜は上着がないと風邪を引いちゃいそうなくらい寒い。それでも、いまこの瞬間は、胸のあたりがぽかぽかしている。私はマスクを外してポケットに入れた。すっぴんに眼鏡の私を見て、彼は意味ありげに笑った。そういえば、彼は私の名前を呼ぶとき、なぜかいつも恥ずかしそうにする。その理由が、わかった気がした。