と、言い合える人は結構少ない。少なくとも、互いを対等な関係だと思っていないと言えないと思う。「頑張れ」は一方的に応援しているときにかける言葉だし、「頑張ります」は一方的に応援されているときに返す言葉だ。
できることなら、頑張りたくない。頑張らずに夢が叶うのなら、頑張らないほうが良い。それでも、つい「頑張れ」とか「頑張ります」と言ってしまう。ほぼ「よろしくお願いします」とか「お世話になっております」みたいなものだ。つまり、「頑張れ」も「頑張ります」も、もはや単なる挨拶であって、実際に頑張るかどうかは誰も気にしていない。
「お互い頑張りましょう」は違う。これを言うのには勇気がいる。言ったからには頑張らなければならない。頑張るということについて、真剣に考えるようになる。ああ、あの人もきっと頑張っているんだろうなと想像してしまう。想像して、頑張れていない自分を責めて、やっぱり自分はだめだと落ち込んで、遠ざかる背中を情けなく眺める。
それでも、「お互い頑張りましょう」と言ったからには、やはり、頑張らなければいけないのだ。頑張って、追いつかなければいけないのだ。追い抜かれたら、追い返さなければいけないのだ。そうやって、次第に肩を並べて、ひとりでは行けなかった場所に行かなければいけないのだ。
口にした言葉は本当になる。これは、本当だ。口に出した言葉とは、すなわち覚悟である。「お互い頑張りましょう」は、覚悟を両者に植え付ける呪いだ。だから、迂闊に言ってはいけない。見知らぬ読者のあなたには、残念ながら言うことはできない。なんにせよ、私は頑張らなければならない。やるべきことは山のようにあり、ぼーっとしている暇はない。
もしも私の健康を願うなら、「頑張らないでください」と言ってほしい。もしも私の飛躍を願うなら、「頑張ってください」と言ってほしい。もしも私の幸せを願うなら、なんと言うべきか考えてほしい。祝福と呪いは紙一重だ。いずれにせよ、迂闊には言えないな、と私は思う。