サンミュージックの養成所で講師の人に言われたこと。バイトしている暇があったら、少しでも場数を踏んで芸を磨くべきだ、と。全くその通りだと思う。
もちろん、生きていくためにお金を稼がなければならない。しかし、飲食などのバイトは一般に、収入手段として極めて非効率である。
時給1200円のバイトがあったとする。このバイトを週5フルタイムでこなした場合の年収は、額面で250万円ほど。一方、年収500万円の正社員の時給はおよそ2550円。年収がちょうど倍なのに時給が倍以上なのは、休日の取り扱いやボーナスの面で正社員のほうが有利だからだ。副業の可否などの違いはあるとはいえ、勤務時間を除いた自由時間が同じことを考えると、正社員のほうが倍以上も有利といえる。
芸人は一度バズって終わりではない。世間から忘れ去られたあとでも仕事をしていかなければならない。芸人以外の仕事でも同じことがいえる。芸人でも作家でも、ミュージシャンでも映画監督でも、コンテストや賞レースで華々しく勝利するイメージばかりを思い浮かべる人が多い。でも、大事なのはそのあとだ。常にヒットを飛ばし続けられるわけではない。世間がずっとチヤホヤしてくれるわけではない。むしろ、短期的なバズはますますインスタントに消費されていくようになる。昨日のトレンドについて、今日も話している人はほとんどいない。そういう世の中で、コンスタントに、長期的に、腰を据えてやっていくことのほうが重要ではないだろうか。
その意味で、一般的なバイトの時給は、長期的にはマイナスだと思われる。競馬やパチンコよりも多少ましなレベルではないか。バイトの時給の対価に差し出した時間で何ができたかを考えてみてほしい。その1時間を1200円で売ることが割に合うかどうかを冷静に考えたほうが良い。もちろん、生きていくためにはお金が必要だ。その手段は、薄給バイトに限らない、ということ。芸人として生きていくつもりなら、それなりに使える武器を持っているはず。それを活かすほうが効率が良い。何が武器か? それはあなたが考えることだ。ひとつ挙げるとすれば、地球儀は、攻守ともに優れた武器かもしれない。きっとあなたもゴージャスな生活を送れるようになる。冗談です。