八度目の引越

池田大輝
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公開:2025/9/25

今朝、引っ越し業者の人が荷物をトラックに積み込んで出発した。いま、新居に向かう電車の中でこれを書いている。地元・秋田から上京したときを含めると、今回で八度目の引っ越しになる。

上京してからは、東京近郊をあちこち行ったり来たりしている。住んだことがあるのは神奈川、東京、千葉。埼玉は住んだことがない。これから住むのは東京のどこか。

引っ越しは好き。大変だけれど、楽しい。なにが楽しいのかを説明するのは難しい。あえて言うなら、同じ場所にずっといるのが嫌なのかも。実家にいるときはそういうことをあまり思わなかった。けれど、一度東京に出てしまうと、狭い1Kにずっと一人で住むのはごめんだ、と思わずにはいられない。引っ越しには、そのような閉塞感を多少は紛らわす効果があるのかもしれない。

18歳で上京したときから、ずっと同じモヤモヤを抱えながら生きている。その正体をつぶさに書き下すことはできない。でも、このエッセィを読んでいるあなたなら、なんとなくわかるんじゃないかな。

あの頃に比べれば、少しくらいは成長している、と思いたい。その意味では、引っ越しには人生の定点観測のような副作用もあるのだろう。最初の家に住んでいた頃に、実家の妹たちから送られてきた物品を今も保管している。ほかにも、思い出の品などは、基本的には捨てずにとってある。引っ越しのたび、そういうものに向き合わされる。

まあ、成長している、かな。成長していることよりも、その結果として、できることが増えたことのほうがうれしい。あの頃には想像もしなかった仕事に就き、人に出会い、夢を見ている。世界がこんなにも広いんだということを知った。

時空間上に地図が広がっていく。人生が次のフェーズに進むたび、見たことのないマップが現れる。ゲームをやったことのある人ならピンと来るだろう。人生は、旅であり、冒険だ。引っ越しは、それを思い出させてくれる。八番目の町はどんな場所なんだろう。そういえば、ポケモンのジムリーダーは8人だったと記憶している。このバッジをゲットすれば、次はいよいよ四天王だ。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink