本当に大事なことはエッセィに書いたりしない

池田大輝
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公開:2026/2/11

本当に大事なことは、エッセィに書かないし、Xにも書かない。友達にも、家族にも話さない。誰一人に対してさえ、伝えていないことがたくさんある。

日々、このエッセィに書いていることは、池田大輝という人間のほんの1%にも満たない。氷山の一角ですらない。熱心な読者であれば、あるいは、私が毎回、絶妙に核心に触れていないことにモヤモヤしているかもしれない。AIにエッセィを読ませると、もっと踏み込めたのではないか、と指摘をもらうことがある。その通り。もっと踏み込んで書くことはできる。けれど、あえて踏み込んでいない。

喩えるなら、大切な人に宛てたラブレターの中身を書くようなものだ。そんなことはしたくない。ただでさえ、ラブレターは書くのに勇気がいる。その人に見せるのでさえ怖いのに。いや、むしろ、ここに書いてしまったほうが気持ちは楽になるだろう。秘密を抱えた状態は、どちらかといえばストレスだ。思いついたアイデアを、すぐネットに書いてしまう人をよく見かける。自分の中に秘めるよりも、出してしまうほうが楽なのだ。

でも、そんなことをしたら、アイデアはそこで終わってしまう。積極的に公開して、みんなの意見を募ればもっと良いものになる、というのは幻想だ。創作も、恋愛も、合議制では成り立たない。他人の意見は基本的に無意味で、私の中にあるものだけが答えだ。いや、答えというものがそもそも存在しない。自分の外に出してしまえば、それは答え合わせになる。正しいとか間違っているとか、フィードバックをもらうことができる。それで安心して、そこで終わる。

こんなところで終わりたくない。こんなところで終わらせたくない。だから、大事なことをこんな場所に書いたりしない。どうしても伝えなきゃいけないことは、その人のためだけに、時間をかけて、こっそり伝える。まるで、ラブレターを書くみたいに。ラブレターの全文を公開したりはしないけれど、あるいは、各段落の最初の一文字くらいは、匂わせ程度に見せても良いかもしれない。このエッセィは、だいたい、そのようなものである。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink