別にどっちかが嘘ついているとかではないと思う。
当初は、「自販機の商品及び金銭が目的で、自販機が(無秩序に)破壊された」という内容だった。しかし、少なくとも何らかの同意をとろうとした努力があった上で、自販機の商品を緊急的に取り出すために破壊したらしいという事実が明らかになった。つまりある程度の制御下での出来事であったとされた。
2024年1月20日の被害届は、自販機が破壊された器物損壊についてであった。自販機の所有権がどの主体に属しているのか明らかでないが、たぶんおいてあった施設管理者とは別の主体に属しているのだろう。どういう形態かは知らないが、自己の所有物をサービスに供するために設置していたら、いきなり壊されてしまっていたという状況なので、被害届もやむなしである。
自販機が破壊されているのは事実なので、あとは・自販機を壊さざるを得ないやむを得ない事情があった、か、・自販機を壊してもいい権限があると勘違いしてしまう事情があった、かの話になるであろう。構成要件該当性はあるので、違法性阻却か責任阻却かということ。確かに大地震で飲料に逼迫していて、かつ停電等で所有者や責任者に連絡することが困難である状況はあっただろう。鍵を探す余裕もなかったかも知れない。救援物資がいつ届くかも分からないという不安もあったかも知れない。自販機に何らかの災害時特殊機能があることも確認が難しかったと思われる。ただ、今回これをお咎めなしにしてしまうと、今後も発生するであろう大地震の際に自販機を無理矢理破壊する行為が横行してしまう可能性があり、それは抑止せねばならない。緊急避難的な自力救済は、極々限られた範囲に絞り、極めて抑制的に扱わなければならない。あくまで例外的な手段であるからだ。
ちょっと前に騒ぎになっていた、私人逮捕と似たような空気も感じる。自販機をぶちこわそうと考える人と、私人逮捕をしようとする人は、「何かちょっとワイルドなことをやっているけど社会のためになっている」的な雰囲気を格好いいと思うタイプの人という点で共通しているのではないかなと思う。
しばらくしたら、各自販機メーカーが災害機能の宣伝をするようになるんじゃないだろうか。災害用の機能がよく知られていなかった、使い勝手が悪かったというのが各自販機メーカーの(批判可能かどうかは別として、自己で改善できるという意味での)落ち度ではあったと思う。