お空にいった犬のお話

renkon414
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あと一週間で16歳になった柴犬のお話

頑固でお散歩好きで気まぐれで、マイペースな犬だった

ボールを投げても追いかけなくて、おもちゃを渡しても困ったように咥える犬だった

私が家から逃げ出しては庭の犬小屋にお邪魔すると、とても面倒くさそうな顔をしてスペースを開けてくれる犬だった

近くにはこないけど、声が聞こえる範囲には必ず寄ってくる犬だった

歳と共に寝る時間が増えて、イビキもうるさくなった

歩ける距離も減ったのに、いつもの散歩コースに行っては歩けなくなり、帰りは不服そうに抱っこされて帰ってきた

歳をとっても、ご飯をもりもり食べて、おやつを食べ、満足気な顔をした

今年は変化の年だった

兄弟たちの引越しで、いつもと違った生活だった

そわそわと落ち着かない様子を犬はしていた

珍しく連日の雨で、大好きな日向ぼっこも、日課のパトロールも出来なかった

霧雨の中、ペットホテルへ預けに行く車の中で腕の中に抱えた犬は温かかった

翌日迎えに行った時には、もう既にぐったりしていたらしい

家に着いてからも水も飲まず立つこともできず

犬はそのまま陽を見ることなくお空に行った

土砂降りの中、冷たく冷やした犬の体を抱えて葬儀場へ行った

高齢の犬をホテルに預けるリスクは承知していたし、きっといつか別れは来ると思っていた

ペットホテルのケージの中から覗くきょとりとした犬の顔が頭を離れない

あの時は混みあっていて、いつものように迎えに来るからねと頭を撫でてあげられなかった

あの姿が立っているのを見る最後とは思わなかった

だって、あんなに元気だったのに

あの時撫でてあげればよかった

老衰もしくは何か他の原因があったのかもしれない

直前まで元気な様子だったから苦しむ時間は短かったのかもしれない

正解は犬が持ってってしまったから分からない

犬の体が無くなった翌日、犬好みのぽかぽかのお日様が庭に注いだ

きっと犬がいれば30分は陽の中で微睡んでいただろう

花見に出かけると嬉しそうにしていて、花の中を歩いて、春が好きな犬だった

移り変わる季節を見つけるのは、いつも犬だった

さめざめと泣いたところで、面倒くさそうに溜息をついて、いつもよりほんの少し近い距離に寄ってきて昼寝をするような犬だった

素直じゃないけど優しい犬だった

自分の人生の半分を一緒に過ごして、大切な家族だった

犬のいない春をどう迎えたらいいのかまだ分からない

目を瞑って蹲りたくなるけれど、丁寧に季節を拾い歩いた犬を見習って、足を進めるしかない

ぐだぐたの気持ちを書き出してみた

活字に取り憑かれた私にはこんな形でしか気持ちの整理ができないから

読む人がいるかは分からないけれど

もしそんな人がいたならお付き合いありがとうございます

犬のことを悲しい気持ちで書くのは多分これで終わりにしたいなぁ