寒い

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さすがに寒いか。キンと寒いと大学時代に住んでいた京都の冬を思い出す。京都というよりはほぼ奈良なのだがそれはまぁ。

大学から歩いて通えるところに住んでいた。だから大学までは徒歩か、天気が良かったり時間に余裕のあるときは自転車に乗って通学した(駐輪場から教室まで結構距離があるのだ)。冬、歩いて通学していると空き地に生えている雑草に霜が降りていたり水たまりに薄氷が張っていたりと、かなり朝は寒かった。どこかの家からはストーブの匂いがし、数頭の犬が吠える声と食器の音が聞こえた。あとは私の呼吸くらいしか聞こえなかった。それだけ寒かったのだ。霧も立ち込めることも多くさながらサイレントヒルだった。

キャンパスは坂の上にあった。朝坂を上って昼か夕方に坂を下った。その毎日だった。たまには起きられない朝もあったが。坂を下りきったところに小さな川があり水辺には草が生い茂っていて、冷気が集まっていた。川は流れているがそれを見ている私よりも川全体の時間が遅く流れていた。私はときおり自転車に乗ってはその川に沿っていけるところまで走った。アインシュタインの相対性理論のことはよく知らないがそういう感じなのだと思う。

大学から下って川と交差したその先には行ったことがなかった。その先には何もないことも知っていたしあるとしても徒歩や自転車で行ける距離ではないことも知っていた。大学生というのは身の程を知ることもときには大事なのだ。その先にあるのはスーパー銭湯というのを風の噂で聞いたことがあるが、銭湯に行けるほど金銭に余裕がなかったのも正直なところだ。

京都は底冷えがすぎる、と聞いてから炬燵に入っても寒く感じるようになった。実際は住んでいたアパートのすきま風のせいだったと今では思うが。底冷えがどうとか言ってられないくらい寒いんだからすきま風なんて寒いに決まってる。暖房が嫌いだったから暖房はつけなかった。だから朝起きたときの「外で寝てたっけ?」と何度思ったことか。自業自得。思えば二階に住んでいたが先の川よりも標高的には低いのだ。そんなところに住んでいたのだから寒いのは当たり前か。そんなアパートで四度冬を越えた。

@ri
なのらー/ゴーフル2