音に護られている。
色に護られている。
目と耳がなかったら、この夜、私は何に護られていたのだろうかとふと考えた。いつも言うが、お守りは多いに越したことはない。
頑張りすぎては小休止。頑張りすぎては小休止を繰り返す。どれだけアクセルを踏めば、そのアクセルを踏み続けられるのか、わたしは生活という名前の教習所で訓練中。私に課せられたうちのひとつの大仕事。仕事よりもお金よりも外聞よりも評価よりも、私は愛と時間と生活を優先した。全てを手に入れられるほど、センスがあるわけでもなかった。
私をよく見ない人は私をなんでも出来ると羨ましがったけれど、多分なんでも出来てなんでも持ってると魅せるセンスはあったのだと思う。そのセンス、わたしは要らない。そのセンスが欲しい人に贈れたらよいのにと思う。きっとどんな人でも、出来ないことも手に入らないものもあるって覚えていられたら、もっと呼吸はしやすくなるはずで、孤独に他人を追い遣らなくても済むだろう。
夜は明ける。
深呼吸。シャワーを浴びてさっぱりとする。洗濯機が回る音。バラード。雨の音。時計がときを刻む音。いくつか書類の体裁を整える。食欲はまだ、鳴りを潜めてはいるが、そろそろ味噌汁と白米を胃に送ろうかと考えている。今日は少し動こうと思うから。
生活を組み立てる。まだ掃除は苦手。カーテンを開けて朝日を取り入れるのは上手くなった。自炊も。
世は開ける。
洗濯機が音で教えてくれる。