杖を新調しました。
これまでのものはもう5〜6年は使った記憶。綺麗なラベンダー色に銀糸のレースを巻き付けてたっぷりのクリアコーティングをしたとても美しい細工の、折り畳みのものです。(購入時、一応、“軽量”との謳い文句が付いておりました。一応。)
折り畳みゆえ、どうしても結合部にガタがきてしまい、持ち上げた時になんだかグラグラしてしまうのです。歩行には支障ないのですが、気になる……。あとね、折りたたみの杖、滅多に折り畳まない。お芝居、映画館、そういう狭い席で、置き場に困る時に畳んでカバンに詰めることはするけれど、私の生活だと、年に1〜2度……えっ、じゃあ、その機構いらないじゃん?
いいかげん次のものを、と考えてはいたものの、欲しいものはあまり扱いを見かけない木製の一本杖。一本杖というものは、使う人に合わせて長さを設えるので、決め打ちで注文せねばなりません。通販サイトを眺めるだけで1年ほど過ごしてしまいました。
いよいよ重い腰をあげて、長さ調節のできるアルミの杖で妥協するか、触れたことのない一本杖を数字と写真を頼りに求めるか……普段使いとはいえ、そこそこのお値段するもの、なかなかのギャンブルじゃない?えっ……?
でも、ほんとうに、今のものは限界。うーん…と、迷いつつ、数ヶ月ぶりに通販サイトを開き、ふと目に飛び込んできたバナー。
『東京店オープン』という文字列。
えっ!?実店舗あるので!?……へぇ、最近できたのね。
詳細を確認し、店舗の場所は無理なく行ける立地であることも確認しました。営業は金土日のみ。
よし、行こ。
思い立ったのが金曜、しかし、サイトによるとこの日は臨時休業。ならば…と、日曜にのそのそと起き出して、行ってまいりました。
店舗に入り、一本杖が欲しいこと、予算はこれくらい〜これくらいまでの間と伝えました。(私の買い物は大体このスタイルです、先に予算を伝えてしまいます。それ以上は叩いても出せませんし、それ以下であれば品物に納得ができるものであれば金額は問いません。)
普段のファッションの好みや、好きな色やモチーフ、ライフスタイルのこと。おしゃべりしながらも、次から次へと選んでは差し出されます。


杖、めちゃめちゃある()
少なく見積もってもサイトの10倍くらいあります。誇張でなく。
デザインだけでなく、加工や材質による軸の硬さも、グリップの握り感も、それぞれ。これは、店舗で相談できて正解でした。きっと、通販で求めてもそれなりに満足はできたと思う。でも、一つ一つがこんなに違うってことは知れなかったわ。


2枚目のお写真、中段がカーボン製の一本成形のものなのですが、塗装も含めて、まあ綺麗。
東レのカーボンですって。すっごく軽いの。すっごく軽くって……あの、私、多分、扱えないわ……軽すぎて……ひっくり返りそう。スリッパがわりに、お部屋で絨毯の上で使うのなら、ぴったりな感じ。
今までのアルミのとは、重さが段違いで“別の道具”だわ。

スタンドに並べられた右端のグリップがツートンのものは最後まで迷ったもの。パープルハートという木。ワインのお色の木肌は天然の色なんですって。
右から2番目(真ん中?)はグリップの木目とオニキスと螺鈿の細工が美しかったのですが、私には少々男前すぎました。
杖もなんとなく色形やつくりにお国柄が出ます。
フランスはシンプルでスタイリッシュな印象。全体的にすっきりと細くて優美なデザイン。
イタリアは飾りっ気が多く、やや豪勢……貴族か?と思うデザイン多々。
ドイツは質実剛健。ぶこつで、道具とはかくあるべきという感じ。少し太めでがっしりとしたデザインが多かったわ。
そして、スタンドに立てかけた左端は、スペインの工房のもの。
素敵だなと思ったのですが、握った瞬間「気が合わない!」と口から出て、店内に笑いを誘いました……。いや、だって、本当に、気が合わない……何もかもがしっくりこなくて、そっと棚に戻されました。私からすると、「何、あのいけ好かない男」みたいな印象。きっと、しっくりくる方もいると思います。彼には素敵なパートナーに出会ってほしい。
そうやって、いくつも触れさせていただいて、手に合わせて選んだものを、今度は身体に合わせてカットしてもらいます。
私は身長に対して腰の位置が高め、さらに3cmほどのヒールの靴を履くことも多いので、身長からの標準に腰の高さと靴の分を考慮してサイズを決めていただきました。今までのものよりも1cmほど長め。
今まで使っていたものは2cmづつしか調整できず、ちょっと短いか、ちょっと長い感じで、短い方がマシか…みたいな気持ちでしたので、今回はピッタリを狙いました。これが、とっても歩きやすい!
初めてなら、少し長めに残した方が後で調整が効きやすいそうです。切ったのは戻せないけれど、短くするのはできるので。

と、いうわけで私のニューギア。
フランスの工房の、持ち手はオリーブ材、軸はメープル材。無垢のものなのでメンテナンスは必要だけれど、その分、とっても手に馴染みます。重すぎず、軽すぎず。これなら手袋も滑らないはず。シンプルでスカーフを巻いても似合いそう。
ストラップは伊賀組紐を選びました。キリッとしなやかな絹の手触りが優しくて嬉しい。(お守りをつけるので、多分、すぐにまたじゃらじゃらになるけれど…)
長く私を支えてね。
Special thanks 神戸ステッキ様