最高の1日

りえ
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公開:2024/8/16

前々から、お盆休みの初日のこの日は最高の1日にすると決めていた。

気合を入れて少し早く家を出た。まずはとにかく朝ごはんが重要だ。チェーンのカフェで食べたサンドイッチは、具材が少なくて物足りない。合わせて頼んだ黒糖入りのコーヒーも、甘過ぎて気持ち悪くなってしまった。

以前から楽しみにしていた展覧会に行くのが、この日のメインイベントだった。朝一番の時間が指定された入場チケットを片手に、会場に入る。そして、少し想像とちがうと気がついた。思いの外ボリュームが少なかったのだ。3千円も払ったのに、たった30分で全て見終わってしまう。

せめてお昼ご飯をどこか美味しいところで食べようと、少し時間を潰してから、目星をつけていたレストランに向かう。最寄の地下鉄の駅から出てきて、先日買ったばかりのお気に入りの折りたたみの日傘を開、けない。壊れてしまったようだ。どうやったって開けない。開けないのだからどうしようもない。閉じなくなったよりはマシだと思いながら炎天下の中歩みを進める。

ネットの評価が割と良かったそのレストランは、入った瞬間にあれ?っとなった。店員さんの動きが悪いし、声が小さい。経験からもうわかってしまう。最初に違和感を感じてしまった店はダメなのだ。案の定、ネットで調べた時にはあったはずの、ランチコースが存在しない。仕方がないから単品で頼む。出てきた料理はびっくりするほど味がない。味がなくてびっくりした。びっくりし過ぎて笑ってしまった。

ランチにしてはそこそこのお値段を支払い、その後ちょっとだけ買い物をすることにした。憂さを晴らすように、いつもだったら買わないようなキーホルダーを手にとってレジに向かい、かばんから財布を取り出そうとした。ない。財布が、ない。今までの支払いはすべてキャッシュレスだったから、財布がないことに気が付かなかった。無くしたのか、そもそも鞄に入れ忘れたのかも分からない。

もうどうでも良い気持ちになった。

結果として財布は家にあったし、食べたご飯もすごく不味かったわけではない。展示だって、量はともかく内容はそう悪くなかったのだ。傘はまあ、セールで買ったやつだしまた買おう。だから、色々ある人生の中で考えるとそう悪い日だったわけでもないのだと思う。ただ、最高の1日ではなかったのだ。そうなるはずと決まっていたのに、そうではなくてちょっぴり悲しくなってしまったのだ。