鏡をたくさん見る人は、ナルシストなのではなく、自分がどう見えているのか不安なのだ、という話をどこかで聞いた。その話はある程度本当だろうと思う。
実際私はその手のひとで、アクセサリーショップの鏡とか、雑居ビルのガラス窓とか、そういうところに自分が映り込むと、ついまじまじと見てしまう。もちろん家を出る前に鏡を見て出てくるわけなんだけど、鏡の中の拵えた自分がきちんと見えても、外を歩く、不意をつかれた自分は変かもしれないじゃないか、なんて。だから今日も飽きもせずに虚像を見る。それで、安心したり、ぎょっとしたりする。
私の探索者の中に、鏡を見ることが癖の子がいる。この子の癖は私の癖からとった。私も、その子も、いつか鏡を覗かなくなる日が来るといいと思う。