2
私が記憶するかぎりの「うちにいた犬」のなかで、2番目の犬からは飼い始めから記憶がある。2番目の犬はミニコリー、またはシェルティで、鼻づらに白いラインが美しく入っており、私が小学生のころから高校2年ごろまでいてくれた。私の心のいちばん柔らかいときに、じっと横にいてくれた子である。さいご(漢字表記をすると、悲しくなってしまう)は、かなり具合が悪く、私は学校に出ているあいだ、気が気ではなかった。
せめて一緒に送り出したかったのだが、それは叶わなかった。
よくあることだろうが、私と家族は、2度と犬と暮らすまい、こんなに悲しい思いをするのは、もう経験したら、壊れてしまうから、とそれから十年近くはうちに犬はいなかった。
その後ささいな、本当にささいなきっかけで、トイプードルが今うちにいる。
それまで私は犬と、どうやら友達であった。ところが、このトイプードルについては、友達というのは少し違うような感覚であって、それはどちらかというと、保護すべき対象、というふうが近いだろうか。
トイプードルはかなり元気がよいが、暑い時は具合を悪くし、寒くてもいけなかった。それはそれまでの犬だってそうなのだろうが、そういうことが、私の目にはっきりとうつるようになったということだろう。
仕事に行くあいだ、なにかあったら、攫われたら、暑かったら、寒かったら、こんなに元気な子犬のことで、私は少しの悪い想像だけで号泣することができた。同僚には「犬の前に人間が潰れそうで、もはや生き物を飼うのに向いていないのではないか」と言われた。
暑ければ、寒ければ、自動でエアコンがつくように機器を購入し設定した。ペットカメラを設置し、犬用の高級ベッドを置いた(よくある話で、あまり犬はこれを使ってくれることはなく、人間用のソファに長くなって寝ていることが多い)。
トイプードルを撫でる際、愛おしさに力一杯撫でてしまいそうになり、この小さな温かい毛むくじゃらには力が強すぎるので、体の中で力をころしてからやさしい力で撫でる。そうすると、歯を食いしばることになる。
話を聞くと、叔父も子どもの頃、飼っていた犬に同じ撫で方をしていたそうで、笑ってしまった。そのまま犬の名前を呼ぶので、少し籠ったような発声になるそうである。