紡ぎ歌

ringoko
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壊れた時計が16ビートを刻みつづける丑三つ時

エルメンライヒの紡ぎ歌の十六分音符が踊っている

真っ暗な部屋で快活な音符が跳ねまわる

わたしはかたく目を閉じて時計が止まるのを待っている

けれども時計は一向に止まらない

昨日まで止まっていたはずなのに

電池はとうに切れているはずなのに

紡ぎ歌はもう弾けないはずなのに

紡ぎ歌がけたたましく鳴りつづける

部屋のなかで

頭のなかで

――耐えられない

意を決して立ちあがり

時計の息の根を止めた

部屋はすっかり静かになった

エルメンライヒの紡ぎ歌はもう聴こえない

静けさが代わりに夢を紡ぎはじめる

拍子のない

五線譜もない

真っ暗な眠りのなかで

@ringoko
ほんのすこし、しずかななにかをおいておきたい