かなしみが煙のように立ち昇る
細く細く緩やかに
かなしみが煙のように立ち昇る
長く長くしなやかに
白い煙はたおやかに身をくねらせて
いずれは空気に溶けていく
かなしみも心のなかを漂いながら
時の流れのなかに溶けていくのか
けれども煙は決して消えない
確かな存在を感じさせる残り香
かなしみも決して消えない
いつまでも残り続ける確かな傷痕
見えなくなった煙が部屋中に充満するように
静かなかなしみが心のなかに満ちていく
あまりに静かで誰も気づかない
あまりに透明で誰も気づかない
誰も気づかないうちに
わたしたちは溺れていく
誰も気づかないうちに
わたしたちの呼吸が止まる