星月夜

ringoko
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湿った闇が流れる

光は眼下に遠い

故郷の畑でよくかいだ、あの煙の匂いが漂う

暗い川が流れる

白い光が走る

来ては去りまた去って

同じレールを走る蛇

冷たいベンチに座ると時計は裏側

時間が見えない

わたしは腕時計を握りしめる

あなたもあなたの時計を何度も何度も何度も見ている

(それは本当に時計でしたか?)

ごめんねと言って

おやすみと言って

手を振ったのだけれど

きっと休ませる人は違う人

知らない人ならいいのに

でも、きっと

(それは一体誰なのでしょうか?)

こんぺいとうを渡したかっただけ

紅茶の香りの特別な星をあなたに

賞味期限は一年先

それでも月の大きな夜でないと渡せない気がして

(わたしの腕時計は、昔見たお話の女の子のブレスレットによく似た、星と月の意匠が可愛いものです。デフォルメされた星と月の)

今宵の月には命を燃やす「本物の」星がよく似合う

けれど誰も月ではありえない

あなたでさえも

(「星・あなた」と「星・わたし」の間には際限のない虚空と虚無とがよこたわっている。たとえアルビレオの宝石たちであっても、永遠を共に生き続けることは叶わない)

それでも出会ったのです

光と闇がさんざめく泉の底で

離れていく宇宙の運命にあっても

あなたの光が見えた

あなたと光を交わした

充分、幸せなのではないでしょうか……

たとえ暗い石炭袋に落ちたとしても

また帰ってこられるようにわたしが輝き続けましょう

(あなたの欲する輝きが別にあったとしても、それはそれでいいのです)

わたしを助けてくれた、その光がどうか幸せでありますように

どこにいても、何をしていても

幸せに輝いていますように

@ringoko
ほんのすこし、しずかななにかをおいておきたい