深い影
静かな緑
立ち尽くす街路樹は
見知らぬ森に降るのと同じ雨に濡れて
教えられたこともない歌を歌っていた
彼らは知らない
無数の木々の無数の葉も
鳥たちの歌声も
虫たちのオーケストラも
それでも
渇いた街の
疲れた家並みの
何十年も変わらず走る電車の
寂れた駅の
白い教会の
暗い川の流れの
すぐそばで
森と同じ雨にうたれて
木は歌う
コンクリートの箱のなかで
木は歌う
森の木々と同じ歌を
忘れないで
あなたも歌っているひとりの木
孤独でも寂しくても
いつの日かひとつの音楽に
ひとつの大きなコーラスに
あなたの歌もきっと、きっと