やわらかな春の

ringoko
·

春の野を

やわらかく埋める

ちいさな草花

やわらかないのち

目覚めたばかりの

伸びゆくばかりの

未だ刈り取られない

やわらかないのち

いずれ刈り取られることを知りながら

風はなにもできずに過ぎゆくばかり

運命を知ってか知らずか

いのちはしずかに揺れている

風のなかで

うなずくように

わたしは知っている

刈り取られた枯草を

むせかえるような夏の緑の匂いを

土に還っていく亡骸を

いのちは還り、いのちは帰る

いのちはまた帰ってくる

いのちはまた帰ってくる

次の春に帰ってくる

先のいのちの運命を知らずに

いのちの先の運命も知らずに

次のいのちをつなぐために

何度でも手をのばす

いのちはやわらかな手をのばしつづける

空へ

光へ

未来へと

@ringoko
ほんのすこし、しずかななにかをおいておきたい