春の野を
やわらかく埋める
ちいさな草花
やわらかないのち
目覚めたばかりの
伸びゆくばかりの
未だ刈り取られない
やわらかないのち
いずれ刈り取られることを知りながら
風はなにもできずに過ぎゆくばかり
運命を知ってか知らずか
いのちはしずかに揺れている
風のなかで
うなずくように
わたしは知っている
刈り取られた枯草を
むせかえるような夏の緑の匂いを
土に還っていく亡骸を
いのちは還り、いのちは帰る
いのちはまた帰ってくる
いのちはまた帰ってくる
次の春に帰ってくる
先のいのちの運命を知らずに
いのちの先の運命も知らずに
次のいのちをつなぐために
何度でも手をのばす
いのちはやわらかな手をのばしつづける
空へ
光へ
未来へと