何の予備知識もなく、アマプラで「小公女」という映画を見た。2017年作の、日本だったらテアトルとかでやってそうな身近な生活系というか、そういうかんじ。
主人公ミソは30才くらい?仕事は家政婦、といっても定期的に若い女の家の家事をしてるだけのようで、お金はなく、暇そう。
楽しみは、煙草とウイスキーと、優しい(漫画家志望の)彼氏。でも、会ってもおしゃれなレストランにも行けないし部屋が寒すぎてセックスもできない。
物価高で家賃が払えなくなり、アパートを引き払ったミソは昔の友達(バンド仲間)の家に行くが、それぞれ事情を抱えている。同じように貧乏な友達、妻に出て行かれたところの後輩、いてもいいと歓迎してくれる家では不能の友達に結婚を迫られ、結局出て行く。
最後に頼みの綱の彼氏も、漫画家をあきらめて、サラリーマンとして海外赴任の道を選ぶ。彼も結婚してついてこいとも言わないし、ミソもついて行きたいとは言わない。
彼女はどんなに貧乏でも煙草をやめられないし、節約して暮らしを立て直そうともしない。住まいより、白髪対応の高価な漢方薬を欠かさない。それを友達になじられるが、言い訳も何もしない。ただ淡々と自分を通すだけなのだ。
ふわふわと特別自己主張もせず、しかし他人の生き方も肯定する。
リアルな話をすると、ミソには頼る親もきょうだいもいないし、怪我や病気、望まぬ妊娠などしてしまったら、詰むしかない生き方だ。(ラストは行くところがなくなってテント生活だし)
でも、ミソが魅力的に見えてくるのは、こういう映画にありがちな「自分探し」をしないからだとおもう。ふわふわしてるが揺るがないモノを持っていて、なんだかかっこいい。
この映画に美男美女は出てこない。ズルかったり自己中だったりもするけど、優しいところもある普通の小市民ばかり。そう見えるキャスティングもうまいなあと思う。
ストーリーだけ見れば底辺のしんどい話なのに、なんだか好感の持てる映画だった。