虚無に囚われている。
そう言えば大抵の大人は笑うだろう。同じ大人という面をしている私を見て不適合だと痰を吐き捨てるだろう。
別にいい。私の心の内側は、その何にもない膨大な次元は、誰が触れることもないのだから。知られることもなければ目に触れることもない。未知のものを既知の理解で片付けようなんてよくある話だ。
大好きな恋人もいる。収入にだって満足している。肉体は極めて健康で、運動するにも申し分ない両手足がついている。
なのに、どうして私は檻の中に入れないのだろう。
心という檻は、どうして私を追いだしてしまうのだろう。
愛する人がいれば、お金があれば、健康であれば、それは祈りを捧げるべき幸福を享受している人間か。無意識がそう理解している。そう思い込んでいる。
たぶん、私にとっては違う。
心臓のあたりに、あるいは脳内にぽっかりとできた大きな穴を埋めるには、足りない。何もかもが足りていない。
自由という不自由。縛られないという拘束具。
いったいいつになれば、私はここから抜け出せるのだろう。
脱獄できるのだろう。