きっと大丈夫

川手 遼一
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公開:2023/12/2

渋谷にある「羽當」というお店に、10年ほど定期的に足を運んでいる。

行ったことがある人には、わかるはず。

「ジブリ」を連想させるような店内の雰囲気、ウェッジウッドのアンティーク食器の数々、口数は少ないけど丁寧な接客、よく冷えた水と無垢材のテーブル、控えめだけど清潔感のあるお手洗い etc

当時珈琲が苦手な旨を伝えた際に、歳の離れた先輩から「一度羽當に行くといいよ、羽當の珈琲を飲むと珈琲が飲めるようになるよ」と言われて興味本位で足を運び、田舎から出てきたばかりの自分は前述したような雰囲気に一気に飲み込まれて、ただただ放心してしまったことを昨日のように覚えている。

肝心の珈琲に関しても、実際に羽當のブレンドコーヒーを飲んだ後は珈琲が飲めるようになり、毎朝ネルドリップで濃いめの珈琲を自分で淹れて飲むようになるまでに、そう時間はかからなかった。

その後自分はタワーレコードでCDを買った帰り道、ゼミ終わりに後輩と...といった形で訪れるなどし羽當へ度々足を運ぶようになる。

ただ東銀座にある会社でインターンとして働き始めるようになると、渋谷にある羽當に通う頻度はみるみる落ちていった。

また当時付き合い始めたばかりであったパートナーが嫌煙家ということもあり(当時羽當には愛煙家が常に寄り合っていた、現在は都条例に伴い禁煙に)次第に羽當への足は遠のいた。

それでも半年に1度は足を運んでいたと思う。

羽當で珈琲を飲みながら重大な決断を下したり、悩みを抱えて考え込んでいたことは、1度や2度ではない。

その日も、明日には公開される キーマケLab のことで悩んでいた。

諸般の事情で公開が1ヶ月ほど遅れていた上、他社が類似した調査リリースを公開してしまうという恐怖の中「一秒でも早く出したい」と焦る自分と、「本当に公開して大丈夫か?」と自問する自分と、「...意外と無風に終わるのでは?」と冷静にマイナス思考に陥る自分とが心の中で三つ巴状態となり拮抗していた。

そういう時には、羽當の「楡」がよく効くことを自分は経験則でよく知っている。

◻︎

自分は必ず、羽當では「楡」を注文する。

羽當では基本珈琲はペーパードリップで淹れるが、2種類だけネルドリップで淹れるデミタスメニューがある。そのうちの1つが「楡」だ。

20歳の頃から、なぜか困ったことやネガティブな思考に陥った時に楡を飲むと「きっと大丈夫」と、自然と冷静に考えられる。

楡は淹れるのに時間がかかるので、注文する際に大抵「...30分ほどお時間かかりますがよろしいでしょうか?」とお店の混雑状況にあわせて確認を取られる。

その待ち時間に長考するから...というのもあると思う。

たぶん、自分が抱えるレベルの問題は大抵の場合、冷静に、集中的に20-30分考えていれば解決してしまう程度のものなのかもしれない。でも何か「楡」には不思議な力がこもっているような気もする...。

そういう不思議な珈琲を提供するお店が渋谷にあるのって、なんか素敵じゃありませんか?

注:いつのまにか店内に「No Photo」のマークが設置されていたため、店内写真はありません。でも公式 Instagram アカウントに見ているだけで癒される、素敵な写真がたくさん掲載されていますよ。

@rkawtr
PPC-LOGという個人ブログ、キーマケLabという広告メディアを運営している Web 広告運用者の川手です @RKawtr 山もオチもない、取り留めのない話をしずかなインターネット上に掲載しています。 ppc-log.com kwmlabo.com