はたして連れて帰った、この人形。
頭部と手以外がピンク色のパイル地で出来ている。
胴体の中身がどういった素材のものか
分からないのと
頭部に一部金属が使われているらしいので
濡らすわけにはいかないのだが、
髪があまりにボサボサで櫛も通らないので
似たような人形のメンテナンス方法を参考に
まずはシャンプーを試みた。
結果は…あまり変化は見られず。ただ、多少
櫛通りは良くなった。
もともとはストレートのおかっぱだったと
記憶しているのだけど、正直なことを言うと
意外にこのボサボサな方が愛らしいと思っていたので
これはこれでまあいい。
それに、今までの埃や汚れを落とすという意味でも
シャンプーをしてよかったと思う。
髪をきれいにしたところで、次が胴体のメンテナンスだ。
よく見ると、あちこちに縫い合わせた跡がランダムにある。
おそるおそるリッパーで糸を切って
中身を取り出す。
出てきたのは、細いストローを数ミリ幅にカットしたようなもの。
これには驚いたと同時に感心した。
中身の入れ替え用にと、手芸店であらかじめ
人形用の樹脂製ペレットを買ってきていたのだが、
そのペレットよりも軽く、汚れることもない。
もともとそのようなものが入っていたのか、何かの拍子に
パイル地が破れて中身が出てしまい、代替品として思いついて
入れたのかわからないが、いいアイディアだと思った。
ただ、どうしてもパイル地の胴体は
ほつれてきたりしそうだったので、
胴体や足、腕の大きさに準じた袋をつくって
その中にペレットを入れて、
パイル地が破れても
ペレットが飛び散らないようにしてみた。
シャンプーとオペが済んだ人形は
どことなく、
わたしと一緒に安堵したように見えた。
思えばずっと窓辺にいて、こわい目にも遭って
こころがあるならどれほど不安だったろう。
できることは限られるかもしれないが、
ここからはおだやかに過ごしてほしい、と
思うようになった。