解像度を上げる3つのタイプ
解像度が高い人って自分で解像度を引き上げるだけの行動ができる能動タイプと、いろんな状況に巻き込まれたり経験したりで解像度が上がっちゃった系の受動タイプがいるなと感じています。そして恐らくもうひとつ、このロジックを理解して意図して解像度を引き上げられるタイプの3タイプに大別出来ると考えています。
能動タイプ
能動タイプは多分天才に属するタイプで、クリエイティブの世界には居ますが、ビジネスの世界にはあんまりいないイメージです。少なくとも自分が過去に仕事で関わった人間では存在していないです。たとえ仕事であっても夢中になって楽しんでいつの間にか終わってたみたいなタイプですね。最強だけどほんとに見かけない。
受動タイプ
受動タイプは本人が望む望まずに関わらず、世間的に見て苦労と呼ばれるものを経験してきた人たちです。苦労という言葉を使うと「苦労はしないに越したことはない」という意見もあり、私もある一定は理解しますし、できるだけ苦労はしたくないなあとも思うのですが、苦労からしか得られないものもあるのもまた事実です。
苦労というのは何かというと、望んでいない受動的な行動と経験と言い表せると思います。望んでなくても「やるしかない」ので強制的に経験値が積まれていくんですね。で、こういう経験をすると望む望まずに関わらず行動に至るまでのハードルが低くなるんです。めちゃくちゃシンドい苦労をした後だと、ちょっとした苦労は鼻歌唄いながら出来るようになる。結局行動に至るまでの心理的ハードルが一番の敵なんですね。
ただ、行動に至るまでの心理的ハードルだけかというとそうでもなくて、苦労してるときって制約事項も結構ハードで、崖っぷちでミスが許されない状況だったりします。そうなると何を見るべきか、何を考えるべきか、何をするべきか、それぞれのレイヤーで優先度を逐次判定することが求められます。
そして苦労しているときは大抵お金もありません。お金を工面したりする事が必要になると各方面に交渉する必要も出てきます。苦労の状態が深刻であればあるほど交渉力が問われるようになりますし、人間の裏面と正面から対峙しないといけなくなります。相手を選ぶということもありません。自分にとって相手が必要か否か、それだけ。選り好みなんて出来ません。そしてもうひとつ、法的な考え方や行動の仕方なんかも身に着けないと戦いに勝てないので、身につける必要が出てきます。
こうして苦労を乗り切った人は、多分ビジネスの世界である一定の成功が出来る素地が完成します。有り体にいえば行動力・観察力・判断力・交渉力・体力が身につきます。
逆に、身に付けられなければ苦労の段階で失敗して地獄を見ます。地獄を見ると「もう二度とあんなのはゴメンだ」という気持ちが乗り切った人よりも強くなるので、これはこれで強い人が出来上がります。
よくビジネスで視座って言葉が使われますが、苦労と似たようなもんです。
このあたりをデータで可視化したのがGoogleの人事です。
能動トレースタイプ
冒頭に3パターンあるといいましたが、もうひとつが「大きな苦労はしたこと無いけど、受動タイプが成長するのに必要なロジック」を理解しているので、擬似的な苦労状態に身を投じる事ができるタイプです。
やばいくらいに解像度が高い人と一緒に仕事したりすると、同じ人間とは思えないくらいに感じるんですね。でも当の本人はケロッとしてたりする。そこからその人のことを研究したり、行動を真似したりして身につけていく感じです。
このタイプはその「ヤバい人」に憧れを持っているか、負けず嫌いであることが多いように感じます。いずれにしてもそれなりの行動力がないと出来ませんが…。
他に方法はないのか(ここからは読む価値ナシ)
たぶんここが、今弊社の課題でもあるし、多くの企業で課題になる部分なのかなと思いますが、現状弊社だと昇格による視座の変化で解像度が上がるのを待つ、という処方しか出来ていません。
で、去年からPdMをやらせてもらっていた中で見えてきたのは、経営層の解像度を持ってないと理解できない情報をそのまま降ろしがち問題です。
これの何が問題かというと、経営層から情報を受け取るのがマネージャー層の場合、マネージャー層は「たぶんこういうことだろう」という理解度で動き始めます。なんでそんなあやふやな状態で動くねん、アホちゃうか、と思われるかもしれませんが、経営層の決定を遂行するのがマネージャー陣の役割でもあるので、素直に受け取っちゃうんですね。でそんな状態で各部門に情報が降りると余計に事態がややこしくなります。
PdMという立場としては、非常に危ない問題なので、これを是正する必要があります。そのために必要なのは「最適化」と「翻訳」だと考えています。
例えが難しいですが、4K画像をそのまま渡しても、HD画像までしか対応してない人は4Kの持つデータを全部は受け取れません。なのでHD画像に変換する必要があります。あるいは、相手の部門に応じて一部をクロップしたりしてから渡してあげる必要がでてきます。これが「最適化」と「翻訳」です。
この、表現が正確かはわからないのですが視座を降ろして、目線を合わせた状態で説明ができる人、というのがもしかしたらとても少ない可能性があって、今後これが出来る人が市場価値高まるんじゃないかなーと思っています。
で、これがどうして解像度の引き上げに繋がるかというと、元データの4K画像とHD画像の両方が揃うとそれらを比較することが出来るようになるんですね。経営層が言っていた言葉の表現と意味がなんとなくでもわかった気になれます。わかった気になってさえしまえば、あとは確認するだけです。つまり「そういうことね!」の繰り返しも徐々に解像度を引き上げる効果があると考えています。
あくまでこの状態ではHD画像からのアップコンバートではあるので、4K画像にはならないんですが、これを繰り返すことで4K画像のまま受け取れるほどの器の大きさに変化していきます。なので、苦労を積むよりも時間はかかると思いますが、会社という組織の中で社員の解像度を引き上げる方策としては一番じゃないかなと考えています。
というのも、PdM1年目はこの翻訳にだいぶ時間を使いました。なのでPdMっぽいことは実はあんまり出来てません。出来てないんですが、メンバーの解像度の引き上げにはある一定の成果を感じていて、結果一人ひとりが能動的に動き、発言し、改善するというサイクルが上手く回るようになってきたと感じています。
なんでPdM1年目にんなことしたかというと、プロダクトも組織も大きい状態でプロダクト志向を取り入れるというのは結構重い話で、全員とはいわないまでも大半が理解してないと成功出来ないと思っています。成功しないなら変えないほうがいいとすら思います。変えるならちゃんとやりたい。そして周りのモチベーションが低いと何も変わらないというのを過去に前職で経験してるんですね。メンバーレイヤーは経営者のお遊びだと思っちゃったりするし、今そんな事してる場合か?みたいなテンションになります。
なので、とにかく説明に時間を割いたし、メンバーからの意見を積極的に聞く、取り入れる(やってみる)というのを実践し、結果、メンバーが仕事のやり方を変えていこうと前向きになってくれたし、提案の精度も上がってきました。
新規事業系だと説明に時間を割くのは無駄、とにかく突き進む、みたいな話も聞くんですが、実際これが正しいのかは知らないですが、もしそうだったとしたら新規事業とグロース事業とでは真逆の行動倫理が必要なのかもしれません。
まあ私がカリスマ系ではないというのもありますが、ブルドーザーのようにパワーで持って行くと失うものも大きいんですよね。自ら捨てるなら兎も角として、失うのは大抵大事なものだったりするので、経験則上あんま好きじゃないです。
なにより、今のメンバーには恵まれていると正直に感じているので、彼らを失いたくはないというのもあります。もしそうでなかったら破壊的変更をした可能性は否定できません。