揚げ餅

六萬
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父から菓子をもらった。

風呂上がり、リビングに行くと父が帰ってきて晩ごはんを食べているところだった。

飲み物を取るついでに何となくお菓子を探しているところ、父が「ちょっといいのやるよ」と言いながら立ち上がり、何かを探すように部屋へと戻っていく。

すぐにリビングへと戻ってきた父親の手には、おかきのような菓子が入った袋が握られていた。『揚げ餅』なるお菓子らしい。まぁ、つまりほぼおかきである。

聞くところによると、この『揚げ餅』、最近になってメーカーが生産を終了してしまった代物らしい。揚げ餅を売っていた近所の小売店も、もう販売できるのは在庫限りだというので、本当に終了してしまうのだろう。

この類の菓子は好みではあるので、もらえる分には嬉しいのだが、元は父が食べるために買ってきたものであるはずだ。その上、もう手に入る機会が限りなく無いという揚げ餅。果たして父親の手元には残っているのだろうか。

「自分の分は大丈夫なの?」

一瞬驚いたように目を開き、

「、ある」

僕が人の菓子の心配をするのがそこまで意外だったのだろうか。幸運なことに、貴方の息子は人を心配できる人間に育っているので是非とも安心してほしい。

そして、

恐らく父の手元に『揚げ餅』は残っていない。

目を開いた本意は恐らくこちらだ。約20年に渡って同じ屋根の下で暮らしている人間の嘘はこうも見破りやすいものなのか、はたまた彼が嘘をつくのが下手なのか。

真意は分からないが、考えて分かることでもない。湿気がほとんど無いような季節、しばらくは揚げ餅がしける心配も無いのでゆっくり食べることにする。

@rokuman
重箱の隅をつつく様に