個展 ”UNDER WATER”に寄せて

Rooo Lou
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東京・西武池袋百貨店(6月)と福岡・タグスタ(7月)で行った個展”UNDER WATER”について少しだけ書いてみる。

今までは1つ1つ絵の構図や内容はバラバラで、大きなテーマの中での作品制作が主だったが、今回はそこを統一し色や人物の見た目は違えど「同じ絵」をひたすら描き続けた。いくつか理由はあるが、大きな理由の一つに今回掲げたテーマについて強い思いがありそれを表現したかった、というのがある。

個展タイトルは今回「UNDER WATER」。日本語では「水中」という意になり並べた絵に一部水を連想する絵はあったが、9割ほどの絵は今回ヘッドフォンをかけた人物のポートレートとした。

ヘッドフォンをかけた人物が、水中という言葉とどういう関係性があるか、というところだが水中という言葉はあくまで概念的に使った言葉でもう少し書くとすれば、静かな場所で自分と向き合う空間はどこかと考え、その結果自分にとっては「水の中」というのが当てはまるのではないかと考えた。別に静かな森の中、閉ざされた部屋の中、でも良いかもしれないが水の中というのは自分の声を発することもできなければ、自分で自由に動くことも難しい場所で、とても時間の流れがゆるやかに感じられる場所だと考える。自分はその空間を自分と向き合う場所にぴったり当てはまるのではと思い、今回”UNDERWATER”と展示タイトルをつけることにした。

今ゆっくり自分と向き合うこと時間ががとても大事、必要だと考える。一番の理由はネットとの関わり方について考える機会が最近増えたことにある。自分はwebの世界で長く働いてた過去の経験、そして今もSNSを活用し外部とのコミュニケーション、プロモーションを行う中で毎日「光の画面」と向き合いながら日々を生活している。仕方ない部分もあるが、それにしても、と思うこともある。

そして自分のこともそうだが、ネットを開くと日々「誰か」が「誰か」と、もしくは「何か」と戦っていたり、謝っていたり、悲しんでいたり。一方的な「攻撃」もっといえば「いじめ」のような光景も見えてくる。本来普通の生活をする上で全く必要のないことに対して感情を揺り動かし時間を消費し、みんな何を得てるのだろうとも感じる。どうしてもネットを活用していると自分を大きく見せよう良く見せようという思いも強くなるのはわかるし、時には必要なことなのかもしれない。ただそれは時にやりすぎなように見えるものもあれば、自分を見失い結果とても悲しい出来事に発展してしまう機会も多くなってしまっているように思える。コロナウィルスで様々な自粛が増えた2020年ごろから特にそう感じることが多くなった。

デジタルの世界から離れ自分と向き合う時間、大事なことをゆっくり考える時間が強制的にでも今必要ではないか、上記のそんな思いからUNDERWATERという言葉を使い自戒の意味も込め今回展示を構成していくことにした。その中でヘッドフォンをモチーフに選んだのは、誰にでもなじみのあるモノ、というのもあるが、例えばテレビとかみているとスポーツ選手が移動中に大きなヘッドフォンをしているのを見かけることが多々あると思う。理由はそれぞれあるかと思うが、他人に話しかけれれたくないから、自分に集中したい、気分を上げたいからなどがあると思う。イヤホンよりヘッドフォンの方が大きく見た目的にもわかりやすいため「話しかけて欲しくない」と意思表示がはっきり見え「1人になれる」時間も作りやすくなる、今回ヘッドフォンを選んだのはそういった理由からでもある。

強制的に1人になれるアイテムだが自分の意思でそれを「外す」こともでき、いつでもその空間から逆に離れることができるというのもとても大事なことだとも考える。なんでもそうだが考えすぎは逆効果に働くことがあり、適度に潜って、適度に水面に上がってくる、そういう柔軟さ、バランスも併せて必要だと思う。

そういった経緯から今回作品を作り、展示を構成していった。最初にも書いたが今回の展示は自分の強い意思表示の機会であり、いつも以上にみた人がどう考えるかどうかはあまり考えないようにした。もしかしたらいろんな種類の絵があった方が観る人は楽しいのかもしれないが、自分的には自分が今描く必要がある絵で構成することのほうが大事で、良いと思う人が少なくても(多いほうが嬉しいのはそうだが)今回とても達成感のある展示にすることができたと思う。

また、大きい絵だけで構成する展示、というものずっと叶えたかった内容だったので実現できたのは良かった。福岡は展示スペースの関係から大きい絵だけというのは難しかったが、逆に小さい絵をたくさん展示する、ということで違ったアプローチでテーマを表現することができたのではと感じている。

自分と向き合う、という言葉は良く使われる言葉だが今本当に自分と向き合えてる人がどれくらいいるか。どんな小さなきっかけでもいいので、誰かの気づきになるような機会に今回の展示がなればとても嬉しい。そして作品には表面の色や構図、モチーフなどに作家の思いというものが隠れているということを知れればもっといろいろな作家のそれぞれの作品に触れた時に、自分の中の普段出会えないような感情を見つけることもできると思う。


長くなりましたが最後に、東京と福岡の展示にお越しいただいた方本当にありがとうございました。またどこかで観ていただける機会を作れるよう今後も作品と向かいながら制作を続けていこうと思います。