星旅少年のグッズが紹介されたのに興じてこの作品の魅力について語らせてください。普段漫画はあまり読まないし、最初に星旅少年を手に取ったのもほんの偶然の興味で、自分でもここまで好きになるとは全く思っていなかったんです。けれど昔から刺激より日常、現実より仮想、つまりここにはないけれど何処かに存在するかもしれない日常のお話が大好きで、それは絵だったり、写真だったり。それを鑑みると星旅少年を好きになるのも必然だったのかもしれない。
まずこの作品特有の世界観とか、空気感とか、世界の奇麗なところと優しいところを全部ぎゅっと詰めた感じがとても好き。キャラクター同士の関わり合いも、普段忘れてしまいがちな、互いを思いやれる私たちだからこそ生まれる暖かさを煮詰めたものになっているし、そこに生まれる関係性の変化だとか変わらないものだとか、そういうもの全てに夢中になれる。それを包む世界観も、“これ”だからこそ全ての魅力値を底上げしてくれるのだと思う。あとは絵のタッチ。写実的とは言い難いその“イラストで出来た世界”というのがまた良い。文字からも、世界観からも、絵のタッチからも、全てから優しさを感じ取れるこの作品が大好きなんです。
それからアイデア。自分じゃ思いつけない素敵な空想がたくさん詰まっていて、読んでいて楽しすぎる。どこか現実味があって、でも仮想だからこそできることがたくさん詰まっているのが、ワクワク感を思い出させてくれる。その章の主人公となるアイデアからお話に溶け込むように出てくるアイデアまで、何度読んでも飽きないものばかり。普段余裕のない時には考えられない、自分の中の興味を引き出してくれて、読む度に人生の楽しみ方がまたひとつ上手くなれた気がする。気がついたらそういえばあれやってみたいな、これやってみたいなと空想に耽っていることも多くて、作品に没頭している時だけでなく読み終わったそのあとの時間にも楽しさを生み出してくれるのはこの作品の大きな魅力だと思う。
読み方も変幻自在で、例えば好きな巻を1冊取って読んでみたり、お気に入りのシーンを見返すのもいいし、適当に捲って目に入った単話だけを読むこともできる。自分のお気に入りは作業の合間に1話だけ読む方法。それだけで心地のいい気持ちになれていい休憩になるのだから物語って不思議。坂月さかなさんの画集のプラネタリウム・ゴースト・トラベルと併せて読むのもとってもいい時間を過ごせる。ぬるま湯のような星旅少年の居心地の良さがとってもとっても、大好きです。