『PERFECT DAYS』を観た(ネタバレあり)

ryu22e
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公開:2023/12/30

ブルク13で鑑賞。

前情報はほぼ入れないで観た。キャッチフレーズが「こんなふうに生きていけたなら」とのことだが、これも鑑賞後に知った。

始まって数分で「これはもしかして、孤独な独身中高年男性が理不尽に苦しむ人生を描いた話なのか?」と不安がよぎったが、完全に杞憂だった。主人公の平山さん(あえて敬称を付けたい)は「自分の人生を絶対に肯定してやるぞ」という強い意志を持っているように感じた。私は平山さんのように清掃員の仕事はしていないが、来年50歳の独身男性だ。年を取るにつれて親は年老い、自分自身も老いを感じ、心が揺らぐことが増えてくる。そんな私から見て、平山さんは素直にかっこいいと思える人物だ。こういう人をかっこいいと思える価値観が自分にあったことが嬉しかった。

この作品は主人公は無口という設定なのであまり喋る場面がないが、印象に残った台詞がある。1回観ただけなので細かい部分は違うかもしれないが、平山さんと友山さんという人物とのこんな会話だ。

友山さんが平山さんに「影って重なると濃くなるんですかね?」と尋ねる。「じゃあやってみましょうか」と平山さん。縦一列になって自分たちの影を重ねてみると、(当然ながら)影は濃くならない。友山さんは「濃くはならないですね」と話を切り上げようとするが、平山さんは「濃くなるはずだ」と主張し、姿勢を変えて何とか濃くなる部分を探そうとする。平山さんは若干力を込めた様子で言う。「だって、重なった影が濃くならないなんて、そんな馬鹿な話あるわけないじゃないですか」。

私の文章力だと雰囲気をうまく伝えられなくて恐縮だが、一見他愛もない話に平山さんの「これこそ自分の譲れない大事な核の部分なんだ」という矜持のようなものを感じた。これは役所広司の演技力があってこその表現なので、観た人にはおそらく伝わると思う。

ラストの平山さんの泣き笑いのような表情も美しかった。今年最後の観賞が年間ベスト、オールタイムベストの作品になった。Blu-rayが発売されたら必ず購入するつもりだ。折に触れて何度も鑑賞したい。

@ryu22e
映画鑑賞、格闘技観戦、立ち飲み屋巡りが好きです。