クラファンに出資したのがいつだったか覚えていなかったが、調べてみたら2018年だった。ということはコロナ禍前か。
「ヒットしたらドヤれるので」ぐらいの理由で出資したが、思いの外面白い作品になっていたので結果としてはよかった。壇弁護士と金子さんとの、弁護士と依頼人の関係を越えた友達トークは観ている方も楽しくなる。また、俳優の演技も見事だった。映画好きの人ならわかると思うが、かなりの豪華キャストだ。クラファンの特典として事前に脚本を読ませてもらっていたが、文字だけだと面白くなるのかピンとこなかったシーンもしっかり見応えのある法廷ドラマになっていた。特に、壇弁護士を演じる三浦貴大はこの作品でファンになった。ちなみに、彼は『夜明けまでバス停で』という作品では本作とは真逆のカスみたいな男を演じている。
とはいえ、主張している内容には納得できない部分がかなりある。Winnyは使用しているだけで(使用者が意図しようとしまいと)違法なファイルの流通に加担してしまう仕様なのに、そこに触れずに当時と変わらない包丁と職人の例えを出すのは適切とは思えない。また、Winnyは使用者次第で適法に使えるかのように印象付けているが、それは金子さんだけが使っているダウンロード専用Winnyがない限りできないのでは? という疑問もあった。事件から約20年経っている今このテーマを作品化するなら、これまでの否定的意見も踏まえた俯瞰的な内容にしてもよかったのではないだろうか。金子さんを擁護したい気持ちに寄りすぎて、いくつか混在している論点をすべて金子さん側に都合が良い結論にしてしまっている印象はあった。
というわけで、私としては全肯定はできないものの、見どころが多い作品だった。当時の騒動を知っている人は思い出しながら楽しめるので、ぜひ視聴してみてはどうだろうか。劇中に登場する00年代のネットスラングを音声として聞くと、妙に気恥ずかしい気持ちになれるのも隠れお勧めポイントだ。Winny事件自体を知らない人は、一度「Winny」でググって経緯を調べてから観たほうがいいかもしれない。