『ボーはおそれている』を観た(ネタバレあり)

ryu22e
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ブルク13で鑑賞。

私は怖い映画は基本的に苦手だが、評判がいい作品は観るようにしている(見逃すと何か悔しいので)。特に、アリ・アスター監督の作品は『ヘレディタリー/継承』以降は欠かさず観ている。

冒頭で母親の死の原因を探るミステリー的な話なのかと思いきや、主人公ボーがいわゆる信頼できない語り手だと気づいてから、物語自体がどう転ぶのか読めなくなり、今までのアリ・アスター監督作のなかでも特に難解な作品だと感じた。映像と現実が一致しているなら、ボーの父親は怪物で、ボーは母親を絞め殺し、最終的に溺死しているが、これらが何らかのメタファー的な表現だった可能性もある。というか、映像通りならさすがに後味が悪すぎるので、私はメタファー説を推したい。

全体を通して気になったのは、ボーの母親の息子への異常な試し行為と執着、それに対してボーの抑制的というか50近い年齢にしては幼い人格だ。これはホアキン・フェニックスの演技の素晴らしかったところだが、ボーの喋り方が気弱な中学生といった感じで、このぐらいの年代なら母親から無茶なことを言われても困った人だなという程度で済ませられそうなものを、オロオロして「ママ、どうしたらいいの?」といった反応をしてしまう。

ボーと母親の親子関係は非常に危ういバランスの上で成り立っている。かといって、これが家族をネガティブに描いただけの作品だとは私は思っていない。監督の過去作を思い返してみても、家族の「呪い」のような側面を描きつつも、それだけでは割り切れない複雑な感情を込めているように感じる。本作の終盤でのボーが母親の首を思わず絞めてしまう場面は、歪な親子関係を破壊し、ボーが従順な息子から大人へ一歩踏み込んだように感じた(あくまで、実際には首を絞めていないという解釈が前提だが)。

鑑賞後はぴおシティの「ホームベース」で立ち飲み。久々におでんが食べたかったので注文した。

@ryu22e
映画鑑賞、格闘技観戦、立ち飲み屋巡りが好きです。