娘の卒業式を見ながら、私自身、卒業式への記憶がかなりないことを痛感している。小学校も、何か代表であいさつしたということがかすかにある。
中学校もどんな式だったか思い出せないし、高校もない。高校は国公立受験の前の卒業式だったので、よけいに記憶から飛んでいる。
ただ、私が小学5年生だったときの6年生の卒業式ははっきりと覚えている。近所に1つ学年上の友達が数人いた関係で、よく6年生のクラスに顔を出していた。その時の担任のS先生が卒業式でズダボロに泣いていたことを今で思い出す。
このS先生、私もずいぶんとかわいがってもらって、一度自宅まで遊びに行ったことがある。部屋に日清焼そばUFOがあった。私は今でもこれが好きだが、その理由の1つはこのS先生に出会ったこともあると思う。
「大学の時にこれが発売されて、あまりにもおいしいから2カ月ぐらいこればかり食べていたら、胃けいれん(だったか)で入院したとよ」と笑っていた。
S先生は確かF教育大を卒業して初任地が私の小学校だった。5年、6年と受け持ったクラスは、やはりいろんな思いが入っていたのだろう。
卒業式が始まり、卒業証書授与で児童の名前を呼ぶ頃には、もう泣いていた。目どころか顔まで真っ赤で、児童の名簿を持つ手が震えていたことを思い出す。
なんとか名前を読み上げた後は、もう号泣していた。式の間、ずっと下を向いていたのではなかったか。
終わったときは、もう1人の6年生の担任から抱きかかえるようにして体育館を出て行った。
マラソン選手の宗兄弟のような顔つきの先生だった。