中学校の卒業式はほとんど記憶にないが、当日、担任の先生に同級生有志でホウキを贈呈したことはよく覚えている。
3年生時の担任は技術科の先生で、掃除場所の1つに技術科教室が入っていた。掃除と言いながら、教室に落ちている木片とホウキで、通常の教室より広いここで、ホッケーで遊んでいたというのが正しい。
15分ぐらいの掃除時間の5分は、ひとまずゴミらしきものを吐き出して罪悪感をある程度減らし、それからホッケーに興じる。見回りの担任の先生が見えると、急いで掃除をしている振りをする。
うまくごまかしているつもりでも、やはり大人はちゃんと見ているのだ(笑。たぶん先生はわれわれが遊んでいたことは知ったうえで、まあ、それなりに掃除はこなしていたので、大目に見てくれていたのだろう。なんとなく、そう感じていた。
卒業式が近づき、技術科教室の掃除も最後になりかけたころ、「たぶん、先生は、おれたちが遊んでいたことは知っとると思うよ」と話していると、なぜか「罪滅ぼしでホウキを数本買って贈ろう」という話になった。1人300円ぐらい出し合って5本ぐらい買ったか。
卒業式が終わり、職員室で先生に手渡した。卒業証書を入れた筒状の賞状入れとともに、柄が赤だの青だの緑だのに塗られたホウキを手にすごすごと入ってきたわれわれを見た担任が、ニヤッと笑ったことは今でもよく覚えている。
高校に入学して2カ月後、父親の転勤で私は転校することになり、中学校の先生にもあいさつに行った。その時、技術科教室にもちらっと立ち寄ったが、われわれが贈呈したホウキに「第1期卒業生有志寄贈」と書いてあった。
合併による新設校第1期だったので「第1期」だったのだが、「こがんことばしてくれると、先生たちはうれしかとたい」と担任が言ってくれたことを、これもまた、今でもよく思い出す。