転職した

suzuki.sh
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公開:2025/6/22

約13年間お世話になった前職を退職して、今年の5月から新しい会社に転職した。「なぜ辞めたの?」とかそういうみんなが知りたがるような話は、前職のナレッジにすべて書いてきたのでインターネットに書くことはない。これからは社外から応援する立場になる。

転職活動

私は色々あって就職活動らしい事というのを過去ほとんどしたことがなくて、何もかもが謎だった。前職では採用面接とか偉そうにやってたけど、たぶん新卒相手でもほとんどの人より面接を受けた経験が少なかったと思うよ。

なので転職のこともよく分からず、最初は新卒向けの本から始めて、いろいろ読んで調べていた。良かった本は以下の通り。

  • 就活対策サイト「キャリアパーク!」が教える 「最高の会社」の見つけ方

    • 最初に読んだ。巻末にあった参考文献が役に立った。

  • ストレングスファインダー

    • 自己分析のためにやってみた。

    • しかし、前職を退職すると公表したあとに周りから言われた「鈴木さんは〇〇が強みだから大丈夫」といった評価のほうが100倍的確だった。

  • 科学的な適職

    • ぶっちぎりで最も役に立った1冊。

    • 人間の脳というのは基本的にポンコツで、「転職しよう」と少しでも考えると、自己肯定バイアスで「この会社に留まっていたら良くない!転職活動をしている自分が正しい!」といった方向に思考が偏ってしまう。この本には、そういうバイアスを排除して「本当に転職するべきか?現職を続けるのと比較してどうなのか?」といったような考え事を、できるだけ客観的中立な思考に保つための方法が色々書いてある。

    • 例えば「他人に相談しよう」という方法が紹介されてるけど「他人に相談しづらい場合は脳内の友人に相談しても良い」といったように、ひとつの目的に対して手間や視点を変えた複数の手法が紹介されていて、実践しやすい。

    • 第一章だけ読むと「結局どうすれば良いんや?」ってなるけど、最後まで読むと得るものが多い。おすすめ。

  • キャリアづくりの教科書

    • 転職活動終盤に買ってすこし読んだけど、もっと序盤に読めばよかったと思う。

会社探し

会社を探すのは大変だった。前職での経験や昨今のエンジニア事情を鑑みた価値観の変化など色々あって、私は転職先に求める条件のひとつに「関西で毎日出社できる会社」としていた。しかし世はアフターコロナの大リモートワーク時代、いろんな会社がエンジニアの待遇として「フルリモートOK」を掲げていて、求人サイト等でも「リモート可能」は検索できるけど「出社可能」は検索できない。出社できるのは関東の会社ばかりで、関西にオフィスがある良さそうな会社があっても、カジュアル面談で話を聞いてみると「営業拠点でありエンジニアの座席は無い」という話があったりした。とにかく選択肢が狭められているのを感じたのでこの条件は早急に緩和し、フルリモート可能な会社の選考も受けていった。最終的にはフル出社できる会社に転職できたから良かったけど、転職活動を通じて最後まで悩んだのは出社を妥協するかどうかだった。

転職活動の最初は、コーポレートサイト等から自己応募していった。toCとして名前を知っている企業はもちろん、toB向けで過去に導入したり検討したことがあるサービスの会社や、そのサービスの「導入事例」ページは芋づる式に様々な企業が知れるので活用した。そんな感じで自力で企業を調べて応募していくのは結構大変だったけど、そういう事をする人は私以外には少ないらしく、「自己応募で来るのは珍しいですね」「この会社のことを知っていたんですか」というような事をよく言われた。もちろん、多少なりともその会社に興味があったので求人を自力で探して応募したわけだけど、「この会社で絶対に働きたい」という強い志望動機を応募段階で持っていたというわけでもなかったので、話を広げられなかった。この辺は総じて温度差というか私と採用担当の方とで期待値の違いがあったように感じる。もう少し志望動機を言語化して行ったら双方ともに選考しやすかっただろうなと思った。普段面接官をする側の心構えとして「志望動機は応募者が持つものではなく、採用担当の方から持たせよう」という姿勢で面接に臨んでいたのが、自身の転職活動で裏目に出たと思う。

他にも自己応募と並行してスカウトサービスも使ってみたけど、これは自分のスキルセットや価値観にマッチした求人がまったく来なくて、手応えが無かった。自分の市場価値が分かったり、価値観のまったく違う会社の採用プロセスを知れたりして、得たものは色々あったけど、転職に繋がりそうなイメージは持てなかった。おそらく、応募書類やインターネット上に公開している私の実績やそこから想像される人物像と、実際の私の仕事ぶりやスキルセットが大きく乖離しているのではないか...?という仮説はあるけど、分析できていない。

スカウトでうまくいかなかった最たる例として、スカウトを貰った会社のカジュアル面談で「その転職理由だったら、転職しなくても現職でできる事がまだあるのでは?」といったような言葉を貰ったことがあった。転職活動としては最悪だけど、実際に前職を退職する直前までやっていた仕事にはその助言が効いて成果を挙げられた。自分にとっては成長に繋がる良い体験になったので感謝している。

最終的にはエージェントを通して転職先を決めた。間にエージェントを介することで自己応募ならしなくて良いような面倒な手続きが増えたり、自分だったらしないようなトラブルが何度もあって応募先に迷惑をかけてしまったりして、ハッキリ言ってネガティブな印象が強い。しかし、最終的にオファーを受けたのはエージェントから共有された一般公開されていない求人だったし、その会社の事情についてはエージェントが詳しく、なぜ今この会社がこういう求人をしているのか、組織の状態や背景などもエージェントが具体的に教えてくれたのは助かった。もし転職活動をもう1回やり直すとして、エージェントを使うかどうかは悩ましい。それだけメリットもデメリットも大きかった。

業界は選ばずに色々と受けていたけど、最終選考まで辞退せずお断りもされず進めたのはすべてECの会社だったので、結局ECが相性良かったのかな〜とは思った。

最終兵器Deep Research

転職活動中にGeminiのDeep Researchが公開された。

求人サイトやエージェントから紹介される会社は山のようにあり、まったく知らない会社も多い。自力で1社ずつ調べていったのではいつまで経っても終わらないけど、調べてみると自分にはマッチしないとか条件に合っていないという事も多い。前職を辞めずに転職活動をしていたので面接・面談を受けられる予定調整には限りがあり、1社ずつ面談で聞いていったのでは時間がかかり過ぎる。自分の求める会社はどこにあるのか...この数百件の求人リストを調べていって本当に良い会社はあるのか...。

そんな時、有料プランを契約していたものの若干持て余していたGemini Advanced(当時)で、Deep Researchという機能が使えるようになった。

私は転職活動をしているエンジニアです。以下の会社の選考を受けようとしています。

「株式会社◯◯」

以下の観点について調べてください。

  • 開発している製品やサービスの評判・口コミや、社会的意義

  • 関西圏のオフィスにおけるエンジニア組織の雰囲気

    (以下略)

(実際にはもっと具体的なことを書いていたけど)だいたいこんなような感じのテンプレートを用意しておいて、転職エージェントから貰った会社名を次々に放り込んで、あとは数十分待つとGeminiが自動的にググりまくって調べてくれて、レポートが出来上がる。まったく知らない会社でも、エンジニアとして転職するにあたってどういう点が魅力的か?などインターネットの公開情報から分かることはこれでだいたい分かる。仕事上がりで作業やゲームをしたくても、片手間で1日に十数社を一気に調べられる。

もちろんDeep Researchでも分からないことはある。テックブログのような取り組みをしていない会社だとエンジニアの組織や開発については全然なにも分からない、という事は何度もあった。だったら、そういう点を面接や転職エージェントに重点的に聞けば良いという戦略が立てられるので、「ググっても分からないという事が分かる」のも自分にとっては得るものがあった。それを適当なプロンプトを放り込むだけで、自力で時間を取って調べなくてもAIが教えてくれる。良い時代になった。Deep Researchが無かった頃の人類がどうやって転職活動というのをしていたのか私にはよく分からない。

新しい仕事へ

というわけで、新しい会社でエンジニアの仕事をしている。突然TypeScriptを書き始めたのも転職の都合。しばらく仕事ではTypeScriptとPythonを中心に色々やっていくよー。