革製品、どれくらい長持ちしてくれるだろうか。
私物に本革の物はふたつだけだ。ほどほどに手のかかる子たちだ。これ以上は養える気がしない。
ひとつは財布だ。
私の扱いがやはり雑なのか、しょっちゅう傷だらけになっている。が、簡単に手入れをしてやると……
けっこう傷が消える。この写真だと、光の加減でまあまあ傷は見えるだろうけど……。
普通の光源の下であればほとんど見えないくらいには回復する。実際「傷や水に強くて手入れしやすく初心者向け」として売られていた。プエブロというイタリアンレザーらしい。
新品の頃はこんなだった。1年半ほど使っているのだけど、だいぶ面構えが変わったなあ。歴戦の戦士の面構えって感じだ(まだ1年半なのに)。
市販品でなく、ハンドメイドの通販サイトで売っている作品だ。作家さん曰く、
「本革自体はずっと使える物なのに、革製品は縫い目やボタンやファスナー部分から壊れる。だから縫い目もボタンもファスナーもない構造にしていて、一生使える」
らしい。豪気なものづくりである。実際壊れないのでリピーターがほぼ居らず商業としては失敗、というのがご本人の持ちネタだ。
でも、実際、どうなのかなあ、と。このはじめての革財布を持って思った。確かに、水や傷に強い。けどそれは、一般的な革と比べたらって話だろう。やっぱり、フェイクレザーとかと比べたらぜんぜん違う。ものすごくデリケートだ。雑には扱えない。
私のお気に入りの服の中に、フェイクレザーのシャツがある。軽く、やわらかく、着やすくて、扱いやすい。もう本当に、ものすごく雑に扱っている。
ある時は食べこぼしからの盾となり、ある時はグルッグルに巻かれてカバンに突っ込まれ、ある時は合羽がわりに雨を受け止める。友達と食事の時に着ていって、友達が盛大にソースをこぼしたときも、こっちに飛んできたソースを全部受け止めてくれた。でも紙ナプキンでさっと拭けば、なにひとつダメージは残らない。下に着ていたお気に入りのワンピースも無事だ。彼女との間に変に禍根を残さずに済んだのもこのシャツのおかげ、と言ってもよい。
もう、こっちのほうがよほど歴戦の戦士である。手を洗ってハンカチで拭いた直後のほんのり湿った手、で触れることすら躊躇うほど大事にされている革財布よりも、よほど。
けど、これだけ活躍していても、フェイクレザーのシャツの面構えは、買った頃から何一つ変わらない。ほんの少し、くたびれたかもしれない。けど、そのくらい。そしてプラスチック製のフェイクレザーは、数年で加水分解して劣化していく運命にある。苦楽をともにしたこのシャツも、私と一生一緒には居てくれはしないのだ。
革は、どうだろう。一生一緒に居てくれるんだろうか。うっかり水滴がついては水染みが残り、うっかり濡れた手で触っては水染みが残り、カバンに入れておいたらいつの間にか傷がつき、その度に手入れが必要なこの財布は。
と言いながら革鞄も買ったんですよね。
この子もプエブロ。雨のたびにビクビクしながら上着の下に仕舞っている(今のところ無事)。
どちらも不慮の雨とかで突然死したりせず、一生一緒にいてほしいもんです。とりあえずフェイクレザーに達成不能な時間としたら10年くらいだろうか。じゃあ、10年一緒にいてくれ〜っ!