知人からオススメされていた SF 長編、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」上下巻を読み終えた。ここでは以下ツイートに加えて、ほんのりネタバレを加えた感想も垂れ流すので注意。
まず本格的なSF、それも翻訳本でさらには上下巻と長編を読むこと自体が初めてなので、読み通すのにやや苦労した。
特に本作は物理学、生物学、天文学あたりを中心とした現実の科学に丁寧に即しており、その内容が全然理解できないため、専門的な話は雰囲気で読み流しつつも話の流れは見失わないようにする必要があった。
言ってしまえば、「なんだか知らんがトラブルが発生して、なんだか知らんが解決することができた」が連続する。これだけ見ると、そんなんで本書を楽しめているのか甚だ疑問だが、個人的には全然楽しめた。何が起こっているのかはよく分からずとも、そのハラハラドキドキの空気感や、解決したときの達成感は十分に伝わってくる。
専門的な話を抜きにしても、翻訳含めユーモアのある台詞回しなどの演出面でも終始引き込む内容で、瞬間最大風速がどうというより、全編通してずっと面白いという印象だ。
本作は、主人公が記憶の一部を失った状態で、自分が今どこでどんな状況なのかも理解できない場面からスタートする。周囲を観察、推理しながら徐々に状況を整理する。と同時に、記憶が断片的に蘇る。この蘇った記憶が回想シーンとして都度挿入される。それによって現在編と過去編が交互に展開され、それが徐々に繋がっていく。この構成だけでもう面白い。
そして序盤を読んでいるうちには予想もしていなかったが、本作では異星人(ロッキー)が登場し、後に親友兼バディという物語における重要な役割を持つ。この異星人がとても良いキャラクターで、本作の好きな点を上げるなら、迷わずロッキーとの関係性の話をするだろう。(次点でストラット)
ロッキーは知的生命体のレベルとしては地球人と近いが、光を検知する視覚機能は持っておらず、代わりに高度に発展した聴覚を用いて、音で周囲の情報を探ったりコミュニケーションを取ったりする。ただでさえ言語が異なるのに、主人公とロッキーは創意工夫を重ねてお互いを理解していく。このプロセスが本当に面白い。
主人公とロッキーは互いに故郷の星を救うため、同じ目的を持つ者同士協力していく。結末はどうなるのか。何度も訪れる危機にハラハラしながらも、(個人的には) 納得の結末に至って大満足。
普段はミステリーばかり読んでいる自分だが、SFも面白いなと唸らされる作品だった。紹介してくれた知人には感謝しかない。