普段入り浸っているSNSで、しずかなインターネットに推しの話を流していらっしゃる方を見た。
私には俳優の推しがいる。今年で推し始めて4年目であるが、根っから飽き性である私にとって、この推しは歴代最長で推し続けている特別な存在だ。
顔の良さが取り沙汰されがちだが、私はとにかく推しの演技を愛している。役に対する解釈が抜群に私好みで、少しお芝居がくどいところがあるのが最高にいい。板の上では足の先から指の先まで完全に役に浸る。普段はにこやかでとにかく客席を端から端まで見渡して、なるべく一人一人と目を合わせて手を振ろうとするが、役がそれをやらないと判断すれば絶対にやらない。いっそ無愛想なくらいあっさりとはけていく。そういうところまで、とにかく役を尊重する。そんな姿勢を見るたびに、本当に私の推しは良い役者だとしみじみして、嬉しくなってしまう。
歌とダンスはおそらくあまり得意な方ではない。というか、本人のテンションが上がるとどんどんテンポがずれていってしまうし、本人は大体板の上では全力なので、必然的にどんどんずれていく。クオリティー面を見れば決して良いことではないのだろうが、そういうところを見てもやっぱり嬉しくなってしまう。そのぐらい推しが夢中で、板の上で働いていて、その仕事を見届けているのだという気分になれるからだ。
他の演者や、仲の良い役者さんたちには繊細だと言われる。実際にそうなのだろうと思う。役としての姿は絶対に崩さないが、その時々の空気感は結構、見る度に違う。それもまた推しのライブ感を感じられて良い。個人的には、ずっと一定の良いクオリティーを出されているよりは、日によっていくらかのブレなどが見受けられる方が好ましく思えるので、これまた私の好みに合う。
三次元の誰かを推すとき、私はプライベートに関してはあまり興味を持てないたちだ。私が推したい(お金を払いたい)と思うのは、あくまでも、その仕事に対してだからだ。仕事をする時間にお金を払いたいと思えればそれは推しとなるし、逆に言えば消費者としてお金を払うに見合う仕事を観せてもらえればそれだけでいいと思っている。その結果、色恋営業の類や、距離が近すぎるような相手はなかなか好きになれないし、なってもやっぱりちょっとダメかもなぁ、と離れてしまう傾向がある。その点においても今の推しは、最高に合っている。根っから、ファンには優しい。見たいものややってほしいことを折に触れて、配信などで聞いてくる。しかし、どんなリクエストも芝居の仕事を最優先にして可否の判断をする。自分の性質をある程度理解した上で、それがその時のお芝居にどう影響するか、お芝居を観た人がどう思うか。それを優先する。つまり、お金を払って舞台を観にくるお客のことを第一としている。その姿勢がちゃんと見えるのが、本当にいい。
私がお金を払いたいと思う場所と時間を、一番大事にしてくれている推しなのだ。そう信じるに値するし、少なくとも舞台で払ったお金を後悔したことは一度もない。
そういう推しだ。
そしてこの年末、上記の推しに加えて、もう一人推しが増えそうになっている。というか、実質増えた。お金を払っても良い、払いたいと思えるかどうかが私にとって推しと呼ぶかどうかの基準になるが、そういう意味では既にちょこちょことお金を払っている。つまり、ちゃんと推している。上記の推し以来生身の人間を推す機会がなかったが、私は元来、推しを二人持ちたい派だ。一人だけに注力していると、その一人が何かあった時、自分のメンタルにダメージを負うことになる。そんな経験を何度か経た結果、セーフティーネットとしての二人目の推しを置くようになった。もちろん、今の推しを推す間にももう一人の推しがいたが、まさかのその、セーフティーネットとしていた方の推しに何かがあった。諸々あって引退してしまい、今でも観られない円盤などが出てきてしまったぐらいには傷ついて、この数年は今の推しだけを推していた。
が、それが変わった。変わってしまった。いや本当に変わったのか?と疑ってはいるが、多分十分、年末に突然現れた新たな推しは、私のセーフティーネットとして機能している。なんてこった。
推しになると、シンプルに名前を出すのが恥ずかしいという理由で、あまり名前を呼ばなくなってしまう。今いるSNSでも、推しの名前は呼ばない。察せられている方も複数いるだろうが、単に私が恥ずかしくなるので、やっぱり呼ばない。
しかし、今日は大晦日。日付変更線を跨げば、私は俳優の推しを二人抱えて2024年を迎えることになる。なお二人の年齢差はおおよそ20ほどもある。元々がおじさま好きなので、どちらかというと元からいた推しの方がイレギュラーなのだと昨日気づいた。そういう意味でもすごいな、今の推し。
というわけで、ここまで長々と書き連ねた私の最高の推しは陳内将さんといいます。
そして、年末にいきなり増えた推しは本宮泰風さんといいます。
2024年も私は二人の推しを抱えて、一年を楽しもうと思うので、何卒よろしくお願いいたします。