「そうですね」と言うたび、己の力で何も判断できない時の、あたかも苦虫でも噛み潰したかのような苦々しさをほのかに覚える。一寸先は闇、というか灰の色。千寸先はなんかよく分からん色をしていた。「煽り運転は絶対にやめてください」とラジオから聞こえてきたがどの程度から「煽りでしょ」と判断されるのか実は曖昧な、そんな感じの。だから無視してもさほど問題ない程度のことなのかもしれない。「そうですね」のことも、一寸・千寸先のことも。どれもこれも。「煽」という字からは何となく虫っぽさを想起させる。煽るヤツは皆、虫、無視するに限る。むし。ムシ。では「そうですね」と言う度に潰す苦虫は。その苦虫は実のところ自身の産物であるところの私自身は。回線が5Gになったり4Gになったりしている。5Gの速さで無視を決め込み颯爽と生き急ぐか、4Gのままで「そうですね、ハハ」とたまにおどけたりしながら苦虫の味をごまかしつつ生きるのか、それとも3Gで。