正夢という名のなにか(後半注意)

紗玄
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 一番古い記憶で覚えているのは、「まだ入学していない高校での英語の授業風景」を見たところ。

 次は「就職した自分」。なにになったかは服装でわかった。

 その次は、「なにかの曜日を変更する画面」。これが先程。こいつは詰まるところ、飛行機の日程を変える選択をしたという条件下で発生した未来の景色。

 予知とは言いたくない。そんな大層なものじゃない。私は正夢と呼んでいる。でも寝ているときにはまた別に書いたあの夢を見る。この正夢は、起きているとき、ふとした時に視界を遮って去ってゆく。

 しかもこれは見た瞬間に、どうあがいても決定した未来の景色になる。大体は私からの一人称。正夢は一瞬であり、鮮明であるが、その描写故に数分後には綺麗サッパリ忘れてしまう。そしてその景色に合致する時間その秒で思い出し、景色が合致し、そこに到達する。

 こんな仕組みなので悪い景色を見たとしても逃れられないのがもっともなデメリット、さらに付け加えて上記のように変えられた事例はない。更に今覚えているのはなにもない。見た、という記憶だけが薄っすら残っているだけ。実を言うならなに関連かなら頑張れば覚えていられる。

 更にここで付け加えると、一番最初に書いた授業風景は、見た時期より三年後に、実際にその景色をみた。これは事例によって平均値が全く取れない。最長5年。最短数週間。いつ正夢を見るのか、それがいつ来るのかもわからない。見た瞬間に忘れ、該当する瞬間に思い出す。ジンクス?ソクラテス?なんだったっけ、デジャブだ。そんな感じ。

 こいつが一個でも残っている限り、残念ながらそれまでとんでもない事故でも狙われることでもない限り、多分生きている事になる。困ったことにこの病気に歯止めをかけているのがこいつだ。しかもこの正夢と呼ぶ現象は他に聞いたことがない。周りにこんな話もできないし、どう説明知ればいいのか……。

 とか言ってたら今見た。白い壁、中身の見えない額縁。多分絵を飾っている。ギャラリーのどの角度にも該当しない、変な画角。カメラじゃ撮れないだろうどこかの壁と人。どこだ?いつも参加している場所の壁じゃない。まだ見ない場所ということは思い出しでないことは確か。この年になってくるとたまに記憶と正夢が混ざる。違いははっきりあるから頭を回せば識別できるが、この眠れない頭は役に立たない。文字に書き起こしてやっと。明日親の後ろの生霊が増えてなきゃいいけど。多分増えてる。もうやだ。

 移動は無理だなぁ……どうしたもんかな……。朝まで時間潰せればいいんだけどな、その後が困ったな。

 寝る前に過呼吸を起こして、涙も鼻水もダバダバ。寝ていたら多分喉をつまらせて咳き込んでいただろうので、なんとか立ち上がって母の元へ。あれだけ以前悪いことは書いたのだが、すでに和解している。なので迷いなく母に助けを求めた。洗濯物をしていた母はささっとものを終わらせ、その間過呼吸がそれるように笑えそうな動画を目の前で流してくれた。笑うことはできなかったが、少し楽にはなっていた。電気毛布に促され毛布で包まれなんとか収まる。睡眠薬は飲んでいたし、薬も飲んでいたが、どうにも明日、いや今日の不安が勝ってしまったようだ。すでに睡眠薬は効力を失っている。

 そろそろやめよう、飽きてきた。