ソとゼに出会ったいにしえを振り返る3

さいのよいち
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何度も言うのは恥ずかしいのだが、その時の私は本当にビジュアル面の全てが真っ暗闇だった。玩具のビジュアルすら知らなかった。イメージカラーもなにひとつ知らなかった。アーサーの兄だから赤?白?対的に考えると青?とかの想像のみでもう何もわからなかった。

惜しむらくはあの時、おもちゃ屋さんに行かなかったことだ。なぜだろう、あの時の私は玩具を買うことがとても恥ずかしかったのだ。だからアーサーたちも一体も持っていなかった。あんなにファンだったのに。信奉者といってもいいくらいだったのに。見たら欲しくなるに決まってるから、おもちゃ屋さんで探さないようにしていた。でも何回も見た。目の前に立ってじっと見た。もしかしたら、アニメを見始めたのも後半からだったし、レッパのことについて調べ始めた時にはもう玩具展開も終わりそうだったし、今更ハマっては危険という気持ちもあったのかも。

アーサーに関しては特に、手に入れたい欲望といつも戦っていた。でも恥ずかしくて買えなかった。玩具以外の展開グッズが子供向け文具がほとんどだったことも理由にあると思う。それを買うには成長しすぎていて、自分のお金だから!と大手を振って割り切れるほど私は大人ではなかった。公式は私のような年齢の者を対象にしてはいないのだとわかりきっていたし、いやそんなことは当たり前なのだが、買えないフラストレーションも相まってなんだかモヤモヤした。学生時代のあの頃、私はちょうど微妙な狭間の年齢で、どうしても踏み切れなかった。実際にはただの若さゆえの困った感情だし、もちろん今はオタクとして子ども向けジャンルにハマることに何の罪悪感もない。でも当時はあったのだ。

一応言っておくが、環境的に買えなかったわけではない。私がミク口に沼ってしまったことを知った親友のAKさんや母は「おもちゃは買わないの?」と言ってくれていた。私は、おもちゃはいいよ〜!とか笑顔で言っていた気がする。そのくせ、年月が経つにつれ欲しい欲が増大してぼやくようになったしょうもない人間だ。あほか!その時の私にはいいよ〜!かもしれないが、一年後の私はめちゃくちゃどちゃくちゃに後悔してるからな!!まだ後悔してるからな!!!!

あの時、おもちゃ屋さんに行っていたら。まだギリギリでレーザーソ口モン、ゼット、そしてパーフェクトシャイ二ングテクターシリーズ、売っていたと思う。アサたちのシャイテクももちろん。だが思いが断ち切れず、むしろどんどんおっきくなって…やっぱり欲しいと思った時にはもう店頭にはなかった。

なぜ、俺はあんな無駄な時間を…。

数年後、想いを断ち切れなかった私は激しく後悔することになるのだ。欲しいと思った時には玩具はなく、児童書もムック本も本屋になく、漫画続編のレッドパワーズ編はいつまで待っても単行本にならなかった。本屋に行くと必ずボンボン系列コーナーでチェックしたが、何年たってもそこにレッパ編は入らなかった。まだネットオークションを利用できる年齢でもなく、中古ショップも考えが及ばなかった。手段を講じればまだ全然簡単に手に入れることができたのに、わからなかった。知らなかった。古本屋さんを巡って児童書系は割とそろえた。いずれも宝物である。松本先生のコミックスはカバーを二重にかけて毎日読んだ。

未だに夢に見る。私は量販店のワゴンコーナーをあさっている。それが日々の日課らしい。そこに、レーザーソ口モンがある。この夢で発見するのはいつもレーザーソ口モンだ。レーザーソ口モンが5体ほど、埋もれている。こんなうれしいことがあるのかというほど歓喜に満たされる。たまらなくうれしくて、幸せで、それなのに、私はそれを買わない。ワゴンの中から拾いあげることができない。目が覚めて、しぬほど後悔する。

というのも、私は一度現実でこれに似たことを体験している。たしか2001年だとおもう。ワゴンの中にはレーザーソ口モンと、シークレットブレストのウォルト、オーディーンがあったとおもう。それぞれ複数個あった。ソ口モンは4体ほどあった。私はあの時まだ情報に明るくなく、シークレットブレストのことがわからなかった。ソ口モンのこともあまりよくわからなかったのだとおもう。靄に包まれたような記憶だ。

でも、なぜあの時買わなかったのだろう。どうして。どうして。どうして。

そうして、ずっと後悔の夢をみる。

なんだか湿っぽい話をしてしまったが、この時の後悔をきっかけに、私は他ジャンルでグッズをよく買うようになった。ゲームも気になるものはとりあえず買うようになった。すべてはその時にしか売られないのだ。今好きならば、必要か?ではなく、ほしいかどうか?で決めるべきだと痛感したのだ。2カ月たったら、その商品はもう店頭にはない、と言い聞かせた。残るのは自分の後悔という感情だけ。

買えるものは、買えるうちに買いませう。

痛い目を見た私は、後悔という残滓とともに、人生の格言を得た。

ミクロマンクロニクルが発売当時に本屋さんで買えたのは本当によかった。飢えた心に染みわたって、長年の後悔がかなり浄化された。シャイテクの漫画も読めたしね。ストーリーは最高だったし。玩具は持ってないのに何故かほとんどのストーリーを知る人間がここで出来上がった。そしてソとゼのコンビに完全に沼りました。

こんな経緯があったので、コミックスの復刊には涙が出た。私はやっと、ちゃんと、正規のものを買えるんだという喜び。中古品でしか集められなかったあの当時の罪を償う時がついに来たのだと思った。あの時はごめんなさい。もっと好きなものに貪欲になって良かったのだと、今ならわかります。

発売が決まったその日、私は旦那氏に、20年以上前から好きだった漫画が初めて単行本化するので上下2冊ずつ買うね…!と告げました。恥じる必要はないのである。

ずいぶん脱線してしまった。

次は兄さんと、ついにあらわれしソ師匠との思い出を振り返ります。