サクラの枝

夏の季語
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仕事で大規模な立食パーティーを運営した際、帰りに装飾用のお花を持って帰っても良いことになった。

お花屋さんがせっせとブーケを作って、各々ピンとくるものを持ち帰る。

だからもちろんみんなブーケを持って帰るのだけれど、私はサクラの枝を包んでもらって帰ることにした。

胸を弾ませて自分の身長の半分ほどのサクラを見せびらかしながら歩く。タクシーに乗る。家に着く。

すると途端にどうでも良くなった。さっきまであんなに気分が良かったのに。急にサクラが邪魔に思えてきて、どうやって捨てようかということにしか考えが向かなくなった。

さっきまでは家にどうやって飾ろうか、バルコニーに飾ろうか、どんな花瓶に入れようか、と考えを巡らせては妄想に浸っていたのに……。

でもその日は酔っ払っていたし、急に色褪せてしまったサクラについてはそこまで深く考えずに眠った。

翌日、朝起きると部屋に大きなサクラがある。当然、昨晩置いたままの場所に、長い長いサクラの枝がある。

仕事から帰ってきてもサクラはそこに横たわっている。

ああ、そんな目で見ないでおくれ。

私は君の美しさに惹かれたのではなく、サクラをチョイスするワタシ、をみんなの前で見せびらかしたかっただけなのだ。見せびらかしていたのはサクラではなく、サクラを選んだ自分だったのだ。

色褪せたサクラが、私に己の軽薄さを突きつけた。

@sairai
秋生まれだけど夏が好きです。「夏の季語」を集めています。