私の静かなカミングアウト

sakahukamaki
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公開:2025/1/30

私の性別は、肉体的には女性である。生まれた時に、あるいは子宮の中で育まれるうちに女体であることが確定したので、戸籍にも、母子手帳にも、様々な身分証明書にも女性であると書かれている。


昔ばなしをしよう。私は片田舎で生まれ育ち、ウルトラマンアグルに初恋をささげたオタクだった。幼稚園の先生にウルトラマンアグルを見せて、この塗り絵を作ってほしいとお願いし、たくさんコピーして塗らせてもらったのを覚えている。ウルトラマンアグルとはいわゆる「ふたりめ」、主人公ではないほうで、主人公が赤主体であるのに対し、アグルは青が主体となっていた。だから私は青が好きだ。戦隊ものでも赤い主人公より青や緑の仲間の方が好きだ。直近だと王様戦隊キングオージャーの紫色の人が好きだ。

小学校に入ると、あらゆるものが男と女、青と赤で区別される。ランドセルの色は、男は黒、女は赤。スリッパ、草履、運動靴の色は、男は青、女は赤。先述の通りウルトラマンアグルが好きだったし、特撮でも青や緑といった寒色が好きだったから、学校指定の靴や道具を買いに行くとき、指定の店で母が赤を手に取るたびに「青がいい」とごねていたのも、よく覚えている。

だから赤が嫌いだった。女の子だからと押し付けられるピンクも嫌いだった。今でもピンクは嫌いで、赤は似合うのでまあいいか、と消極的許容をしている。

ランドセルではなく、男女共通でランバッグという黄色いカバンになっていなければ、いまあるコンプレックスももう少しひどかったかもしれない。ところでランバッグについて確認したところ、マジの本当に超地元ローカルアイテムだったらしく震えている。RubyWorld Conference2024にて出身が島根県旧平田市であると公開したので何も怖くないから発言するが、島根県旧平田市というところは、図書館や文化施設への投資、不登校児が通うフリースクールの充実と、「社会福祉」を重視していたように思う。昔聞いた裏話では、島根県旧平田市省庁では全職員がインターネットを早々に使っていたらしい。詳しい話は父に聞いてほしい。


私の特性の話もしよう。ASDやADHDとか、いろいろとあるのだけど、とにかく田舎に馴染みずらい特性をしていた。「こだわりがつよい」とか、「先生の言うことをきちんとまもる」とか、「悪いことをしている子を先生に報告する」といった、いわゆる社会性でひとびとが曖昧にするようなことを曖昧にできず、ひとびとにとても嫌われていた。

他にも好奇心が強く、なんでもやってみたいとか、体を動かすのが大好きとか、本当にいろいろあった。社会性がないので「男子が集まって野球をしているときに混ぜてもらうのは互いに大変である」とか、そういった空気読みに致命的に失敗していた。でも、女子が野球をしてはならない理由なんてあるだろうか。女子も男子も陸上をしているのに、どうしてサッカーはしてはならないのだろうか。田舎ゆえにサッカーチームや野球チームが男子のものしかないからか。わからないが、私は結局、田舎に馴染めずに不登校になった。ここらは小学校から中学校までの話を包括している。

小学校で、中学校で、社会で受けてきた「女なのに」という扱いは、じんわりと、でも確実に私の心に降り積もっていた。だからだろう、「男であればよかったのだろうか」と思う日々があった。このあたりから、私の性自認はふわふわと漂い始めていく。


社会人となって、制服が支給された。いわゆるOLや受付嬢という単語で連想されるような、そんな制服だ。歴史のある会社なので、制服が古めかしいこともまああるか、なんてことは分かる。理解はした。でも、「女だから制服、男はスーツを自前で」というスタイルはすんなりと入り込むものではなかった。退職するまで、私服で働けるようになりませんか、と訴えていたように思う。

RailsGirlsというワークショップがある。コーチとして何度か参加したことはあるが、あれらは良いイベントだと思う。女性だからと抑圧されてITの扉を叩けなかった人々の手を引くイベントで、あれは本当に、必要としているひとがいなくなるまで続いてほしいし、出来る範囲で応援したいと思う。これは、RailsGirls Tokyoのえもりさんとお話してようやく腹落ちした結論である。

とりとめのない文章になってきたので、話を戻していきたい。

社会に出て、IT業界のカンファレンスに出て、ひとびとと関わって、結果として「女として認識されることが嫌だ」と思うようになった。要するに「ジェンダーロール(社会性役割)としての女」を拒否したいのだ。お茶汲みは男女どちらがやってもいいし、タクシードライバーだって男女どちらでも構わない。電車の運転手やパイロットに女性があこがれてもいいし、家長制度がじんわりと残る状態から抜け出した世界に行きたい。

とにかく、何だから男、何だから女、と決めつける世界への小さな反抗心を抱えているのだ。自分がその世界に囚われているからこそ、脱したいのだ。


私の肉体性は女性である。ホルモン治療であるとか、様々な手術であるとか、そういった工程を踏まえて男性になりたいとは思っていない。

社会的役割性として女性として扱われることはお断りしている。性自認は「どれでもない」からだ。社会的に定義されたセクシャリティの定義でいえば「ノンバイナリ」でありたいと考えている。時と場合によって男女のグラデーションパラメータを使い分ける「トランスジェンダー」とはまた違い、「アンチ男女二元論」の人である。男と女とかいう枠組みを捨てて、一個人同士の世界になればいいと思う。

クロスドレッサーの気もあるなと思うが、これは「スカートは女の子の象徴」「フリルは可愛いの象徴」がジェンダーロールの女性枠に当てはまるので、ノンバイナリとして逃げるようにクロスドレッサーになるしかなかったのだ。自己表現としてクロスドレッサーをしているわけではなく、消極的選択なので、私はわたしを「クロスドレッサー」と自認するが、いわゆる格好いい、かわいげのかけらもない女性服があれば買うので、性自認である「ノンバイナリ」よりはこだわりが強くない。

まとめると、私は肉体的に女性であり、性自認としてノンバイナリであり、結果としてクロスドレッサーである。あと、家に猫が三匹いる。

そういう人間である。配慮をしたい人はすればいいし、知らなかった人は知っていけばいい。

@sakahukamaki
猫飼い。