整える日

オバマサキ
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 仕事柄、土日に休みが当たるとラッキーと心躍る。けれども一歩街へ踏み出せば、人人人。やっぱり平日休みに限ると贅沢なため息を吐く。自分で煎れるコーヒーはブラック一択なのに、わざわざ購入するならとプラスαの金額を投じミルクを追加。ほのかに甘い香り漂うタンブラー片手に我が家へUターンしたらパパッと近くのホテルをおさえ、チェックインまでの時間は水回りの掃除に没頭する。潔癖でもなければ、綺麗好きを自称したこともないけれど、酔っぱらった同僚が「ヘイ!タクシー!」と勢いよく左手をあげて乗り込み、どこに行くのかと思えば見慣れた景色の先、気づけば我が家のエントランスで下車していた深夜。「急に来てこれってすごいですねー」と口々に褒められた記憶があるし、同じく酔っぱらった都合のいい記憶かもしれないけれど、多分、きっと、最低限の清潔さはキープする性格なのだと思う。トイレの神様なんて信じてもいなければ、ビジネス書よろしくのきれいごとに中指立てた2023年。ハイターを吹きかけたスポンジを素手で握る右手の爪はきっと割れちゃうんだろう。それでも。手を動かして汚れを落とす作業は、心のモヤモヤと怒りと苛立ちと汚さとを落とす作業だと身を持って知っている。歌詞にされなくとも、ゴチック体の説教くさい長文タイトルでこれでもかとアピールされずとも。生活を整えること。それすらもできない日々を生き抜いてきた時間の中で、自分が自分のためにしていることの充足感をこれでもかと味う作業だと感じる。光が反射してるじゃんと自画自賛のシンクを眺めたら、土日休みの醍醐味、市街の夜景を見渡せる広いベッドとプロのおもてなしに心をゆだねよう。